この領域で最も大きな存在感を示していたのがIBMだ。同社は、次世代のIoTである「IoT2.0」におけるコネクテッドカーの重要性を強調し、クラウドを活用した総括的なシステムのインテグレーションを行っている。
同社のオートモーティブグローバルセンターのシニアITアーキテクトを務めるBoris Baltzer氏に、Continental(コンチネンタル)とHERE(ヒア)との関係について聞いた。それに対して同氏は「コンチネンタルとはこれまで、車載データを集積し解析するシステム『eホライズン』を構築してきた。ヒアが高精度地図の基本情報を、コンチネンタルがプローブ情報をIBMに提供し、クラウド上で解析している」と回答した。
またTomTom(トムトム)とRobert Bosch(ボッシュ)がヒアに対抗して総括的なデジタルインフラストラクチャのシステム構築を進めている点について「こちらの案件でも弊社とトムトムとボッシュの間で協議している」という。このプログラムについてはホール8のボッシュブースで「Connected Horizon」というサービス名で展示があった。
IBMは、自動車関連のIoTビジネスにおいて、個々の自動車部品メーカーが行うシステムインテグレーションの領域にあえて踏み込まず、バックエンドでのプレーヤーに徹することで世界各地の顧客を獲得できるという見解を示していた。
デジタルインフラストラクチャにおける競合企業については「TSystems(Tシステム、ドイツテレコムの通信インフラ子会社)とMicrosoft(マイクロソフト)」という2社の名前を挙げた。
ケルン、ミュンヘン、ベルリン、フランクフルト、ドルトムント、ザールブレッケンなど、ドイツ国内の10都市が参画する大型プロジェクト。ドイツ政府による補助事業として、交通渋滞の緩和やフリート(商業車)の効率的な運用をベースとした新しい交通システムの実証試験を行っている。
各都市から2〜4社が出展して実証事業や既に事業化されている案件について紹介していた。
併設するアーバンソリューションマーケットでは、ドイツ国内の施策に限定せず、世界各地の大都市部で発生している人口増加における交通システムの課題解決について、さまざまなビジネスモデルを提案した。
カーシェアリング、バイクシェアリング、そして新種のタクシーサービスなど、交通に対する新しいビジネスモデルについて、欧州各国のスタートアップがプレゼンテーションを行った。先に紹介したスタートアップゾーンの場合は、ハードウェアやソフトウェアに関するビジネスが多く、こちらはサービスモデル関連を集約していた。
この領域は、世界市場においてUber(ウーバー)やLyft(リフト)など、米国企業の存在が目立つ。だが、ドイツの他に欧州各国でも、日本ではまだ知られていないさまざまなスタートアップが存在することが分かった。
こうしたトレンドに対して、自動車メーカーとして最も積極的な動きを見せているのがダイムラーだ。中でも、小型車「smart(スマート)を使ったカーシェアリングサービス「car2go」が有名だ。既に世界8カ国30都市で1万3500台が常備されており、会員数は100万人を超えた。
ダイムラーはcar2go以外にも、moovel、RIDESCOUT、Mytaxi、BLACKLANEなど、さまざまなシェアリングサービスを事業化している。
moovelの投資家向け統括のRalf Echtler氏は「近年、ライフスタイルの変化によって、人と自動車の関係が大きく変わってきている。そうした現実をダイムラーは直視し、長期的な展望で新しいクルマの在り方を検討している」と説明した。
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