最後に、黎明期の中で注目しておきたいもの3つ紹介しよう。
1つ目は「マクロ3Dプリント(Macro 3D Printing)」だ。「“マクロ”の言葉通り、非常に大きなものを3Dプリントすることを指す。大きなものを一発で出力してしまう。あるいは大きなパーツを出力し、それを組み合わせて大きな構造物を作るなどが該当する。最近では中国で建物を3Dプリントした事例が有名だ」と三谷氏。マクロ3Dプリントは、生産性の安定期に入るまでに10年以上かかるという。その理由について三谷氏は「話題性はあるが、実利用になると在来工法と比較した際の品質や安全性、コストメリットなどがきちんと見えてこないといけないだろう」と説明する。
2つ目は「教室での3Dプリンタ活用(Classroom 3D Printing)」だ。これは大学の研究室や専門学校などでの利用はなく、一般の学校における3Dプリンタを活用した教育を意味する。米国ではSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育の向上を目的に3Dプリンタの導入が進み、中国でも約40万校の小中学校に3Dプリンタを配備するという。「中国が本腰を入れるとインパクトは大きそうだが、学校教育の中に、実際に定着するまでには10年以上かかるだろう。導入予算の問題だけでなく、何ができるのか? ということも考えないといけない。それに、そもそも教える先生の技術も足りていない。ただ、将来的にこうした教育が普及すれば、従来の製造方式にとらわれない、3Dプリンタを前提とした新しいモノづくりの発想ができる人材が増えていくかもしれない。そうなると3Dプリンタの応用や採用が今以上に広がっていくだろう」(三谷氏)。
そして、3つ目が「消耗品の3Dプリント(3D Printing of Consumable Products)」だ。ここでいう消耗品とは、食べ物や化粧品、薬など、摂取可能なものを意味する。食べ物に関しては、実際に、チョコレート菓子や砂糖菓子、クッキーやパンケーキなどが3Dプリンティング技術を応用して作られたフードプリンタにより実現されている(関連記事:食べ物を好きなカタチで作り出せる「3Dフードプリンタ」)。「“消耗品の3Dプリント”という項目は初めて入ってきた。化粧品などのケア用品や薬なども、自分の肌や体質に合わせてパーソナライズされたものが3Dプリントで実現されるようになる」(三谷氏)という。
今回の3Dプリンティング技術に関するハイプサイクル2015年版では、医療分野での利活用の拡大が特筆事項といえる。特に、補聴器の3Dプリントや歯科機器の3Dプリントに関しては、生産性の安定期への道筋が既に見えていると言えそうだ。また、3Dプリントを活用した股関節/膝関節のインプラントに関しても、病院と患者、双方のメリットも大きく、術例もますます増えていくものと考えられる。「3Dプリンタの最大のメリットは、やはりパーソナライズされたものを1品生産できる点にある。医療分野は、まさにそうした利点が一番出しやすい分野だといえる」と三谷氏は説明する。
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