花房氏は、ブラザーと共同でメガネタイプの旧モデル(WD-100)を使っての実験を始め、HMDでエコーガイド下バスキュラーアクセス穿刺を行うという目的はおおよそ達成した。しかしWD-100の場合、実用性や使用感で幾つかの課題が見つかった。
1つはHMDを接続するコントロールパネルのサイズだ。旧モデルでは、HMDに映像を表示させるのに、超音波検査装置からの映像を入力する関連装置の取り付けが必要でかさばるため、取り回しが良くなかった。もう1つは、メガネ型の旧モデルの場合、普段メガネを掛けているスタッフは、メガネを外してHMDを装着しなければならない点である。他にも、エコーを見る際の画質や、手技を行う場所とエコーを見る焦点を同じ距離にするピント調節機能についても向上が求められていた。
これらのフィードバックを受け、課題点を解決したのがWD-250Aである。HMDと接続するコントロールパネルは、超音波検査装置からの映像を簡単に入力できるように、HDMIとアナログのビデオ端子を搭載した上で、医療電気機器の安全性に関する規格であるIEC-60601-1準拠のACアダプターに対応しながら、小型化に成功した。また、メガネを常用しているユーザーがHMDを利用する際にメガネを外さなくてもいいように単眼式を採用した。解像度は1280×720画素(720p)と、旧モデルの800×600画素(SVGA)より向上しており、ピント調節機能についてもHMDのディスプレイ部前面のダイヤルを使って即座に調整できるような作りに変更された。
花房氏が所属する透析室のスタッフに対して、旧モデルと新モデルについて9つの項目5段階評価で調査を行った。すると、多くの項目で改善が見られた。ただし、唯一画面の大きさについては評価が下がったが、これについては医療用のWD-250Aにのみ搭載した画像拡大機能によって対応したという。
花房氏はエアスカウターについて、「血液透析以外の用途でも有効」と述べ、エコーガイド下によって行われる生検や神経ブロックなどを今後の応用例として挙げた。また、今後の開発の方向性として、両手で処置・作業をしつつ、視線の移動を最小限としてあらゆる画面情報を参照する場面での活用も期待されると解説した。
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