九州大学は、細胞や組織がセリンを自ら合成することで、強力な細胞毒性を持つデオキシスフィンゴ脂質類の合成と細胞内への蓄積を防ぎ、細胞内恒常性を維持するという、アミノ酸の新たな働きを明らかにした。
九州大学は2015年4月28日、細胞障害性脂質の合成・蓄積を防ぐ、アミノ酸セリンの新たな代謝生理機能を解明したと発表した。同大大学院農学研究院の古屋茂樹教授らの研究グループと理化学研究所脳科学総合研究センターの江粼加代子研究員、平林義雄チームリーダーらの共同研究によるもの。
同研究では、研究グループが構築した質量分析装置によるスフィンゴ脂質類の網羅的一斉分析システム(リピドミクス)を用いて、非必須アミノ酸であるセリンを添加または欠乏した細胞を比較した。セリンが欠損したマウスでは、細胞障害性を持つデオキシスフィンゴ脂質類が蓄積することを見いだした。
この成果から、細胞や組織がセリンを自ら合成することで、細胞内のアラニン/セリン比の増大を抑制し、強力な細胞毒性を持つデオキシスフィンゴ脂質類の合成と細胞内への蓄積を防ぎ、細胞内恒常性を維持するという、アミノ酸の新たな働きが明らかにされた。
また、アラニン/セリン比の増大により蓄積するデオキシスフィンゴ脂質類は、遺伝性セリン合成不全疾患の重篤な組織発達障害と致死表現型に関与する新たな病態関連脂質だと考えられるという。さらに、肥満、II型糖尿病などの生活習慣病患者からも検出されていることから、セリンを摂取し、デオキシスフィンゴ脂質類の合成と蓄積を防ぐことで、生活習慣病症状の改善や発症遅延に貢献できる可能性があるとしている。
同研究成果は、2015年4月23日に米生化学・分子生物学会誌「Journal of Biological Chemistry」のオンライン版に掲載された。
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