安心だからと不必要に「やくそう」を持ってはいませんか。お金がない時に必要のない「やくそう」を買っていては、アイテム数の保持上限や資金の制約によって、強い武器が買えなくなります。使わない在庫を多く持てば持つほど、結果として、“攻めの投資”ができなくなります。強い武器が買えないということは、ストーリーを進めるのに時間がかかるということにつながります。
これらのRPGの状況からも分かる通り、製造業にとって在庫管理は重要なテーマです。ただ、この「やくそう」の話は、実際の製造現場でもよく見受けられるケースでもあるのです。特に中小企業の場合、「機会損失を避けるため」という理由で、多くの在庫を積み上げているケースが見られます。需要変動に対応するというのももちろんですが、多くの場合は「多くのロット数での注文の方が1つあたりの原価が下がる」ということを当てにし、必要以上に仕入れるというものが多いように見えます。
ただ、最近はこのような運営手法が経営におけるリスクとなるケースも増えてきています。どの製品においても陳腐化が加速しており、製品のライフサイクルも過去に比べて短くなってきています。例えば、ヒットポイントを10回復する「やくそう」をたくさん保持していても、少しストーリーを進めるとヒットポイントを50回復する「やくそう2」が出てきて、もう少し進めるとヒットポイントを100回復する「やくそう3」が出てくるという状況では、保持した「やくそう」はずっと使わない不良在庫となります。
同様に、必要以上に作り過ぎたり、仕入れ過ぎたりすると、結局は売れずにその部品や最終製品は不良在庫になります。最近はその割合が以前よりも多くなってきているように見えます。
また、在庫を保管するにも、倉庫の賃料や保険料など経費が掛かっていることを忘れてはなりません。一方、会計上は、現金という資産が、在庫という資産(棚卸資産)に置き換わっているため、足元での会計上の損益には影響が出ません。ただ、実際の現金(キャッシュ)はないわけですから、資金繰りが厳しくなります。会計上は問題なくても仕入れ費用などの現金が用意できず手形の不渡りを出し、黒字倒産につながるような場合さえあるのです。
では、適正な在庫量とはどのように考えればよいのでしょうか。
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