Bloomberg Intelligenceのシニアアナリストを務めるスティーブ・マン氏が2015年の中国自動車市場の見通しを語った。経済成長の鈍化をはじめとするマイナス要因があるものの、中国の自動車メーカーの利益率は成長が予測されているという。
Bloomberg Intelligence(ブルームバーグ・インテリジェンス)は2015年2月3日、東京都内で同社のアナリストが今後の各産業の注目トピックスを紹介する「ブルームバーグ・インテリジェンス 2015年産業展望セミナー」を開催した。自動車分野については、ブルームバーグ・インテリジェンス 自動車担当 シニアアナリストを務めるスティーブ・マン氏が2015年の中国自動車市場の見通しなどについて語った。
マン氏は2015年の中国における自動車販売台数について「前年比で2013年は13%、2014年は10%の成長となったが、2015年には成長率がやや鈍化すると見ている」と語った。その要因としてマン氏は3つのポイントを挙げた。1つ目が中国の経済成長率の鈍化だ。同氏は「2015年のGDP成長率は7%という予測も出ており、経済成長は鈍化傾向にあるといえる。これは自動車販売台数や自動車メーカーの収益にも影響すると考えている」と指摘した。
また、中国の中央銀行である中国人民銀行は、2014年11月に約2年ぶりとなる政策金利の引き下げを行っている。マン氏はこの動きについて「中国市場の場合、自動車購入者のほどんどが現金で購入するため、金利の変動による自動車業界への影響はあまりないと考えている」と語った。
マン氏が2つ目のポイントに挙げたのが、新車登録制限の動向だ。現在、中国では環境汚染問題が深刻化している。それに伴い、1994年の上海での導入を皮切りに、一部の都市で新車登録台数の制限が進められている。最近の事例では、2014年末に深圳(せん)市で2015年の新車登録台数を10万台に制限することが発表された。同市の2014年の新車登録台数は55万台であり、5分の1以下という大幅な台数制限となる。
こうした新車登録台数の制限施策は、Teir1と呼ばれる北京、上海、広州など富裕層が多い大都市から先行して導入されてきた。マン氏は「現在中国の新車販売は、Tier1などの大都市ではなく、その下に続くTier2〜4と呼ばれる都市が成長の中心となっている。そのため、今後特にTier2都市に対して新車登録台数の制限が行われた場合、とても大きな影響がでると考えている」と指摘した。
また、マン氏は3つ目のポイントとして、中国の自動車メーカーの在庫が過剰になりつつあるため、2015年は減産や車両の販売価格の値下げに踏み切る可能性がある点を挙げた。さらに同氏は「こうした流れの影響を大きく受けるのは高級車市場だろう」と指摘する。
中国の高級車市場にはAudi(アウディ)、BMW、Daimler(ダイムラー)のMercedes-Benzなどを中心とする高級車メーカーのシェア競争が激化しており、中国市場向けの新型車を続々と投入している。さらに実際にはこの3社だけでなく、ホンダの「ACURA(アキュラ)」や日産自動車の「INFINITI(インフィニティ)」といった日本の自動車メーカーの海外市場向け高級車ブランドを含む、多くの企業が中国の高級車市場に参入している。マン氏はこうした高級車ブランドのシェア争いに伴う価格競争が激化する中で、中国の自動車メーカーによる値下げの影響は大きいと指摘した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.