自閉症児童は表情の読み取りが苦手であることが明らかに医療技術ニュース

京都大学霊長類研究所の正高信男教授らは、自閉症児童は表情の読み取りが苦手であることを明らかにした。定型発達児では怒り顔を素早く見つけ出せるのに対し、自閉症の児童では、怒り顔で特に成績が向上することはなかった。

» 2015年01月14日 08時00分 公開
[MONOist]

 京都大学霊長類研究所の正高信男教授らの研究グループは2014年12月19日、自閉症児童は表情の読み取りが苦手であることを明らかにした。

 自閉症の子どもは、他人とのコミュニケーションに困難があるということが、近年よく知られるようになっている。その原因としては、「他者の心情を理解することができない」といった高次の認識や推論に問題があるとされてきた。同研究グループでは、自閉症の子どもは基本的な表情の読みとりが苦手で、それが他人とのスムーズな交渉を阻害しているという仮説から、今回の研究を行った。

 同研究では、学業には困難がないものの、人とのやりとりが苦手な自閉症の小学生20名(平均年齢:9歳)を対象に、多くの顔の中から1人だけ特別な表情をしているものを探し出すという課題を行った。子どもが無表情の顔の中から、柔和あるいは怒り顔という特別な表情をしているものを見つけ出し、手で触れるというもので、そのスピードを計測し、定型発達児と自閉症の子どもとで比較した。その結果、定型発達児では怒り顔を素早く見つけ出せるのに対し、自閉症の児童では、怒り顔で特に成績が向上することはなかった。

 怒り顔は、向けられた者にとっては身の安全を脅かす信号ともいえる。それに対し、迅速に対処しようとするのは生物として適応的な反応で、その情報処理はほとんど意識下でなされるという。一方、自閉症の子どもでは、そうした表情を意識下で読み取り、状況ごとに対応を変化させる柔軟性に乏しいことが判明した。

 同研究グループによると、自閉症の子どもが経験するコミュニケーション困難の一因として、同研究で示された知見が関係している可能性が示唆されるという。また、幼少の子どもの障害診断や療育の手段としての応用が期待され、今後は、より小さな子どもでの研究と生理指標を用いた計測を行う予定だという。

photo 「ウオーリーをさがせ」実験に用いた刺激の例。左では1人だけが怒り顔、右では1人だけが柔和な表情をしている。
photo 成績の比較。自閉症の子どもでは怒り顔だからといって、素早く見つけることができない。
photo 左から正高教授、磯村朋子 理学研究科学生

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