さて現在は、まさに多種多様な動力源が自動車に用意されている、環境黎明期。
伝統のガソリンエンジン、最近クリーンな方向にイメチェンを図ったディーゼルエンジン、新顔の燃料電池車、そしてようやく市民権を得てきた感のある電気自動車……などなど、ちょっと考えただけでもこれだけの選択肢(価格や汎用性の是非は置いといて、あくまでもラインアップとして)が、掌に乗っている時代というのは、過去に例を見ないのではないかと思います。
なぜならばそれは「環境との共存」が自動車業界の至上命題になってくるからです。
ガソリンの原料となる化石燃料の枯渇への懸念、温暖化への影響によるCO2排出量の規制。クルマはもっともっとクリーンになってゆくことを求められ、メーカーはそれに応えなければいけません。でも世界中のクルマが化石燃料に頼らない動力源を備えるのは、まだまだ先のこと。
そこで世界中が今できることとして取り組んでいるのが「エンジンのダウンサイジング化」と「変速段数の多段化」です。
2014年11月、自動車業界にちょっとしたザワつきが起こりました。フォルクスワーゲン(VW)が10速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を新開発したと発表したのです。
VWは2003年、世界で初めてDCTである「DSG」を市販車に搭載したメーカーで、世界にDCTブームを巻き起こした張本人でもあります。DCTはそれまでのシングルクラッチでは成しえなかった滑らかなシフトフィールと、積極的に高いギアを選ぶためにエンジン回転数を低く抑えられるという燃費性能の良さからあっという間に主流技術の1つになりました。
そのVWが10速DCTを新開発とは。
多段の自動変速機については、市販車レベルで9速AT搭載車がまさに2014年に発売されたばかり。その時は結構ひっくり返る勢いで驚いたものでした。「え、この多段化の波は一体どこまで行くのよ……?」とドキドキしたものですが、とうとうそれを越えるブツが出てきてしまったというわけです。
しかしこの10速DCTはまだ開発段階。現段階の乗用車部門では「レンジ・ローバー イヴォーク」と、「ジープ チェロキー」に搭載されている9速ATが、最も多くの変速段数を持つ自動変速機ということになります。
そしてその両方に搭載されている9速ATを開発したのが、ZFなのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.