9速ATでもまだ足りない!? 燃費向上に役立つ変速機の多段化今井優杏のエコカー☆進化論(15)(5/6 ページ)

» 2014年12月24日 11時00分 公開
[今井優杏,MONOist]

変速のスムーズさは圧巻

 この9HPを搭載する車両ですが、乗ってみればそのスムーズさは圧巻。燃費走行の極意とは、なるべく低い回転数で高いギアを使って走行することなのですが、それを9HPが勝手にやってくれます。ドライバーはアクセルに足を乗せておけばいいだけ。後はクルマが勝手にシフトアップをしてくれますし、シフトダウンも至極スムーズ。サーキットで行われた試乗会において、コーナー進入直前にバン! と強めにブレーキを踏んでも、その踏力に応じてトントンと下のギアに落ちていく滑らかさは見事でした。

ZFの9速ATの外形寸法 ZFの9速ATの外形寸法。横幅は367mmと小型で、FFレイアウトに対応できる(クリックで拡大) 出典:ZF

 とはいえ、スピードレンジの高い欧州や、一般道が続く北米ならまだしも、日本ではなかなか9速まで日常的に達させることはないかもしれません。ZFの発表によると、時速120kmで走行しているとき、通常の6速ATであれば2890rpmだったものが、9HPだと2170rpmとなるそうですから、その速度域で燃費に換算すれば貢献度は相当なモノ。しかし時速120km巡航できるような道路、日本にはないですものね……。だったらもう8速でエエんちゃうのんとなりますから、私もVWの10速DCTには必要性があるのかちょっと疑問ではあるのです。

 実際にZF側も、インタビューに対して「これ以上の多段化は目指していない」と答えました。「多段化して重量が上がる、信頼性が落ちるなどの問題が出るリスクを考えれば、9速が現在のベストだ」と。

 しかし職人気質のZFですから、VWの公式発表には心中穏やかじゃないはず。こうなったら、意地の張り合いで「12HP」(!) とか出してきそうでコワイ(笑)。

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