NIMS、分子の自己組織化の時間制御に世界で初めて成功医療技術ニュース

2種類の自己組織化構造を有する分子とその分子の側鎖を変えた分子を混ぜ合わせることで、自己組織化の開始時刻を制御することに成功した。将来的には、スマートマテリアルへの展開が期待される。

» 2014年12月08日 07時00分 公開
[MONOist]

 物質・材料研究機構(NIMS)は2014年11月26日、NIMS先端的共通技術部門 高分子材料ユニットの杉安和憲主任研究員らが、分子の自己組織化の時間制御に成功したと発表した。側鎖を変えた分子を混ぜ合わせることで、分子が自発的に集合する現象(自己組織化)の開始時刻を制御し、事前のプログラム通りに自己組織化を進める手法を開発した。

 分子の自己組織化は、光合成や神経回路など、複雑な機能を発揮するシステムの構築に欠かせない現象だ。材料科学・ナノテクノロジー・バイオテクノロジーなど、さまざまな領域で重要な概念で、現在は自己組織化現象を利用した新しい材料の開発が試みられているという。しかし、自己組織化は自発的に進むため、意図的に制御することが難しく、特に現象を時間的にコントロールする研究はほとんど進んでいなかった。

 今回の研究は、2種類の自己組織化構造を有する分子を使って行われた。一方の自己組織化構造は素早く生じるが、エネルギー的に安定ではなく、最終的にはより安定なもう一方の自己組織化構造が一定時間経過後に形成される。この分子の側鎖を変えることにより、エネルギーの安定状態を逆転させ、素早く生じる自己組織化構造のみを形成する分子を作ることができた。この2種類の分子の混合比率を変えることで、エネルギー的に安定な構造への自己組織化が始まる時間を制御することに世界で初めて成功した。

 今後は、同研究で開発した手法を応用し、希望のタイミングで発光させたり、導電性を変化させる高度なシステムの構築を目指すという。また将来的には、生命分子システムのように、時間の経過や外界の環境変化に応じて自律的に機能する、スマートマテリアルへの展開が期待されるという。なお研究の成果は、独化学会誌『Angewandte Chemie International Edition』で近日公開される予定だ。

photo (a)以前に報告したポルフィリン分子1。(b)ポルフィリン分子1が関与できる2種類の自己組織化。粒子状構造が初期に形成されるが、時間経過とともに粒子状構造は消失し、繊維状構造が形成される。(c)分子1の繊維状構造への自己組織化は、約4時間後に開始する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.