主にモノづくりの現場で使われてきた3Dプリンタですが、最近では、10万円以下で購入可能なパーソナル3Dプリンタ(主にFDM方式)が続々と登場しています。なぜこんなに手ごろな値段になったのでしょうか?
その要因は、特許の権利期間の満了が関係しています。2009年には、米StratasysのScott Crump氏が持つFDM方式の特許が権利期間満了を迎えるなどし、低価格化が一気に加速します。
こうした特許切れの動きを見据えてか、2006年に英バース大学のAdrian Bowyer教授が中心となり、オープンソースの3Dプリンタ開発プロジェクト「RepRap(Replicating Rapid prototyper)」を立ち上げました。
RepRapは、FDM方式を採用したオープンソースハードウェアの3Dプリンタで、無償で、誰でも自由に改変したり、販売したりすることができます。また、使用されている部品のほとんどがプラスチックなので、RepRapでもう1台RepRapを作り出すことが可能です。この“3Dプリンタで3Dプリンタを作る”という発想はユニークで面白いですね。世にある安価なパーソナル3Dプリンタには、このRepRapから派生した製品が多く含まれており、造形方式もFDMが主流となっています。
比較的安価になってきたパーソナル3Dプリンタですが、現在のところ10万円前後が主流でしょうか。中にはもっと安いものもありますが、完成品か組み立てキットかの違い、ヘッド数やノズル数の違い、筺体の大きさ、拡張性の有・無、調整のしやすさ、サポートの質なども異なるので選択する際は注意が必要です。
製造現場、そして個人のモノづくりだけではなく、これまでにない新しい3Dプリンタの使われ方も登場しつつあります。
最も有名なのは医療現場での活用でしょう。患者の臓器を3Dプリントし、手術前のシミュレーションに活用したり、実際に骨や血管などを出力したりする技術も開発され始めています。
他にも、the sugar labという会社が、砂糖を素材にしてプリントする3Dフードプリンタ技術を開発。後に、3D Systemsがthe sugar labの買収を発表し、大きな話題となりました。さらに、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)の田中浩也研究室が、何とお米を材料とした3Dプリンタを発表しています。
このように、主に製造現場や個人のモノづくりでしか使われてこなかった3Dプリンタですが、これまでにない新しい使われ方も提案されつつあるのです。
以上、駆け足で3Dプリンタの基礎の基礎をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。今後より身近になっていくであろう3Dプリンタについて理解を深めていただき、その将来性・可能性、そして、モノづくりの楽しさを知るきっかけになれば幸いです。
筆者としては、何かを作ることに加え、その創作活動を通じて得られる新しい経験こそが、3Dプリンタの魅力だと感じています。今後、私たちの生活をどのように豊かにしてくれるのか、3Dプリンタの動向から目が離せません。
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