ローエンドの国産「3Dプリンタ」が登場! ハイエンドは最終製品への活用広がるDMS2014リポート【3Dプリンタ編】(1/4 ページ)

「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS2014)」では、産業向けのハイエンド機から個人をターゲットとしたローエンド機まで多彩な3Dプリンタが出展された。本稿では、3Dプリンタの新製品や強化機能を紹介するとともに、会場で見られた3Dプリンタの出力品、活用例を紹介する。

» 2014年07月17日 09時00分 公開
[加藤まどみ,MONOist]
DMS2014リポート【3Dプリンタ編】

 「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS2014)」が2014年6月25〜27日、東京ビッグサイトで開催された。今回は約350社が出展し、例年同様に活気が見られた。なお、3Dプリンタおよび造形機の関連企業は、国内外から60社が出展したという。産業向けのハイエンド機から個人をターゲットとしたローエンド機まで多彩な3Dプリンタが出展された。ここでは3Dプリンタの新製品や強化機能を紹介するとともに、会場で見られた3Dプリンタの出力品、活用例を紹介する。

日本製の卓上機が登場!

 卓上サイズの3Dプリンタ「ARM-10」を展示していたのが、ローランド ディー・ジー(以下、ローランドDG)である。また同時に、同じく卓上サイズの切削加工機「SRM-20」のデモ展示も行っていた。どちらも発売時期は2014年秋の予定で、製造業をメインターゲットにしている(関連記事:ローランドDGが小型3Dプリンタをお披露目、競争過熱の中で勝算は?)。

 ローランドDGは従来、切削加工機を提供している。切削加工機と比べた3Dプリンタのメリットは造形スピードの速さだ。一方、切削加工機のメリットは強度が強い、表面精度が良いといったことがある。3Dプリンタと切削加工機という2種類の加工手段を用意することで、「それぞれのメリットとデメリットを踏まえて最適な加工方法を提案したい」(ブース担当者)という。また、小型であることを生かして、開発者のすぐ隣に置いて手軽に使ってほしいとのことだ。

ローランドDGが開発中の切削加工機「SRM-20」(左)と光造形機「ARM-10」 画像1 ローランドDGが開発中の切削加工機「SRM-20」(左)と光造形機「ARM-10」

 今回、3Dプリンタの方式に熱溶解積層法(FDM)でなく、光造形を選んだ理由については、「出力後の表面加工が簡単で、表面精度が良く、切削加工とも相性が良いためだ」(ブース担当者)という。会場では、切削品と3Dプリントによる部品を組み合わせたサンプルも展示していた。

切削品と3Dプリントによる部品を組み合わせたサンプル 画像2 切削品と3Dプリントによる部品を組み合わせたサンプル

 ムトーエンジニアリングのブースでは、自社製のシングルヘッド3Dプリンタ「MF-1000」および、デュアルヘッドに対応してワークスペースを広げた「MF-2000」を展示していた(関連記事:ムトーエンジニアリングの国産3Dプリンタ、「試作前の試作」で好評)。

シングルヘッド3Dプリンタ「MF-1000」 画像3 シングルヘッド3Dプリンタ「MF-1000」。セットアップも簡単に行えるという

 MF-2000は、造形サイズが300×300×300mmと、ローエンド機としては比較的大きい。ムトーエンジニアリングは、製図用プロッタや業務用大型プリンタなど、3Dプリンタに関連する技術を有する。代理店として3Dプリンタを販売していた経緯もあり、2013年8月にローエンド機の開発を開始した。同製品のウリは“扱いやすさ”。オープンソースの制御ソフトウェアと、スライサーのソフトウェアを日本語化したものが付属しており、初期の設定調整なども必要ないという。

ムトーエンジニアリングが開発した3Dプリンタで出力された製品サンプル 画像4 ムトーエンジニアリングが開発した3Dプリンタで出力された製品サンプル

 従来のローエンド機は、頻繁に調整や修理などが必要で、技術を持ったユーザーでなければ扱うことが難しかった。そういう意味では、ハイエンド機の方がよほど扱いやすかったといえる。国内メーカーがローエンドに参入することで、今後もソフトウェアおよびハードウェアの両面でより扱いやすい製品が出てくるかもしれない。

ハイエンド機でも新製品

 一方、ハイエンド機を提供するアスペクトは、金属専用の粉末焼結式の3Dプリンタを開発中だという。2014年末から2015年初めの発売を予定しているという。

 アスペクトはレーザーによる粉末焼結法をコア技術としたハイエンド機を提供している。新たな金属専用装置では、チタンとアルミニウムを扱う予定で、まずは医療向けのチタンから始めるという。同装置は真空環境でも造形することが可能。空気中で金属を溶解すると品質が落ちるが、真空中で処理をすることによって高品質の加工が可能になるという。

 また、会場では、粉末焼結ならではのユニークな出力物として、水を吸う金属を紹介していた。粉末焼結では金属をポーラス状にも出力できるため、水を吸えるようになる。レーザーの出力を変えることで金属の密度を変え、一度の出力で、水を吸う箇所と、吸わない箇所を作ることができるそうだ。さらに今回のDMSでは、同社で最高強度となる新材料のナイロン6(PA6)も紹介していた。

ナイロン6(PA6)による造形物。アスペクトでは最高強度の材料になるという 画像5 ナイロン6(PA6)による造形物。アスペクトでは最高強度の材料になるという
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