非常にチャレンジングな機体で注目を集めていたのが豊橋技術科学大学「天伯の風」チームである。まず親ロボットは、掃除機のファンを利用したという吸引装置を搭載。床面へのダウンフォースを生み出すことで、機体を倒れにくくし、子どもロボットをぶら下げた状態でも、安定した急加速・急減速を実現していた。
親ロボットも面白いが、さらにユニークなのが子どもロボット。圧縮空気とエアーシリンダを使ったジャンプ機構を搭載しており、ポールウォークとジャングルジムのタイムの短縮を図っていた。ジャンプすれば一瞬で移動できるので、確かに、決まればこの方法が一番早い。
ちなみにポールウォークでは、「円盤を1つも飛ばさないこと」というルールがあるのだが、実は子どもロボットから上方向に結束バンドが伸びており、ジャンプ中、真ん中のポールの円盤に触れるようになっているそうだ。この工夫によって、うまくルール違反を回避しつつ、ジャンプという手段を実現させた。
ただ、残念だったのは成功率の低さ。予選では、ポールウォークでのジャンプに1回も成功せず、初めて成功したのは決勝トーナメントの準々決勝だった。この試合では、ジャングルジムでのジャンプにも成功しており、SHABAASHを達成している。
大学での練習時には、9割程度の成功率があったそうだが、本番でのフィールドにうまく適応できなかった。最速で50秒のタイムを出したこともあったとのことで、機体がシビアになり過ぎたのが何とも惜しかった。
大塚 実(おおつか みのる)
PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「日の丸ロケット進化論」(マイナビ)、「3Dプリンタ デスクトップが工房になる」(インプレスジャパン)、「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)など。宇宙作家クラブに所属。
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