そんな中、全5試合でSHABAASHを達成するというダントツの完成度の高さを見せたのが名古屋工業大学「ロボコン工房」チームだ。予選の勢いのまま決勝戦まで勝ち抜き、見事初優勝を成し遂げた。
名古屋工業大学チームがユニークなのは、子どもロボットにダクテッドファンを搭載していること。通常、ブランコを漕ぐのは親ロボットの役割で、子どもロボットは座席にしがみついているだけなのだが、同チームの子どもロボットはファンを回して推力を発生し、自らこいでいたのが面白い。このファンは、ジャングルジムを登るときにも使われていた。
ただし、ブランコでリトライが多かったのは今後の課題だろう。5試合中、1発でクリアしたのは1試合だけで、そのときのタイムは1分ジャスト(これが全体のベストタイム)だったのだが、残りの4試合でリトライがあり、30秒近くタイムをロスしていた。他の課題はほぼノーミスだっただけに、これは何とももったいない。
失敗の原因は、親ロボットがブランコを押すタイミングと子どもロボットのファンが回転するタイミングがズレたことだという。ファンは旗に向かって行くタイミングで動かさないと勢いが得られない。同チームによれば、ファン側のタイミングには単純にタイマーを使っていたそうなので、加速度センサーを使うなどして、子どもロボットの動きをちゃんと見るようにした方が良いだろう。
名古屋工業大学チームは日本代表として、ABUアジア・太平洋ロボットコンテストに出場する。それまでにタイムの短縮を図り、50秒を切ることを目指すそうだ。ABUロボコンでは2013年、金沢工業大学チームが日本勢として8年ぶりに優勝している。日本の2連覇がなるかどうか、注目が集まるところだ。
今大会、非常に不本意な結果となってしまったのが東京大学「RoboTech」チームだ。東京大学チームと言えば、予選の1試合目から課題を達成してくる安定性の高さが伝統である。だが今回は、最初の試合こそ1分9秒の好タイムで勝利したものの、2試合目のシーソーでトラブルが頻発。結局、試合中に不具合を直せず、1点も取れないまま、この試合を落とすことになってしまった。
遊具の周囲は円状の子どもゾーン(黄色のエリア)となっており、ルール上、親ロボットはこの中に進入できない。シーソーに子どもロボットを置いてから、親ロボットは子どもゾーンを迂回して反対側に行く必要があるのだが、東京大学チームの親ロボットはここに進入してしまったのだ。
2回のリトライでも同じ失敗を繰り返していたので、これは操縦ミスではないだろう。親ロボットは手動ということにはなっているが、センサーを使って操縦を補助することは許されており、多くのチームがそうした機能を導入している。その方が、タイムを短縮でき、ミスも減らせるからだ。ただ、赤側だった1試合目では問題なかったので、環境条件の違いにより、青側でのみ発生する不具合だったのかもしれない。
東京大学チームは、決勝トーナメントでも同じ問題が再発し、リトライの間に豊橋技術科学大学がSHABAASHを達成。トータル1勝2敗という不完全燃焼で大会を終えた。機体のポテンシャルは高かっただけに、非常にもったいなかった。
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