図研は2015年度(2016年3月期)までの3カ年を対象とした中期経営計画の進捗状況と今後の重点方針を発表した。今後、オートモーティブ分野、北米市場、国内新規市場の3つの領域で事業の拡大を狙う。
図研は2014年6月11日、東京都内で2013〜2015年度(2014年3月期〜2016年3月期)までの3カ年を対象とした中期経営計画の進捗状況と、今後の3つの重点方針を発表した。
2013年度の実績は、売上高が約197億円、営業利益は約6億3000万円。3カ年計画1年目の達成率としては売上高が104%、営業利益は97%で、ほぼ達成した形となった。なお同社は、中期経営計画最終年度となる2015年度で、売上高250億円、営業利益28億円を達成目標に設定していたが、オートモーティブ関連の新製品開発などへの先行投資が増加するため、営業利益の目標値だけ25億円に下方修正している。
図研副社長の勝部迅也氏は、「2013年度は、北米戦略としてシリコンバレーに設立した『図研創造センター』の人材採用など、投資側の経費が増大したこともあり営業利益は目標達成とはいかなかった。しかし、事業内容としては良い着地ができたのではないかと考えている。オートモーティブ関連や北米市場は、今後の売り上げの伸びを期待できるが、コンサバティブに目標値はそのままにした」と現状について語った。
図研は中期経営計画の目標達成に向け、まずオートモーティブ分野での拡販に注力する方針だ。同社の車両用ワイヤーハーネス設計ツール「Cabling Designer」は、現在多くの自動車メーカーで利用されているという。しかし、自動車メーカーが作成したハーネスの論理回路を基にティア1サプライヤがハーネスの製造を行う際、ティア1サプライヤは自社開発のソフトウェエアを使用している場合が多い。
そこに目を付けた同社は今後、ティア1サプライヤに対し、製造用ワイヤーハーネスの設計ツール「Harness Designer」を積極的に販売していくことで、自動車メーカーだけでなくティア1サプライヤまでの拡販を目指すという。なお、同社は2014年4月からオートモーティブ&マシナリー事業部を新設しており、オートモーティブ分野に注力できる体制を整えたとしている。
また、自動車業界全体の電装システム構想設計へのニーズに対応するため、構想から詳細/製造設計までをカバーする新たなシステムを開発すると発表した。ドイツの自動車関係のコンサルティング人材をスカウトし、現地に設置したR&Dチームを中心に開発を行っているという。勝部氏は「自動車設計に電気が入ってきたため、どのメーカーも非常に難しい設計をしなくてはならないという問題に直面している。今後は構想設計の中で、部分ごとにソフトウェアでやるのか、ハードウェアでやるのかを切り分けていく必要がある。車両をシステムとして捉え、アーキテクチュアルなデザインをトップから構造設計まで含めてやっていく」と語った。
図研は2013年9月、米国カリフォルニア州のシリコンバレー地区に半導体関連のソフトウェアに関する製品企画と開発のグローバルな拠点として「図研創造センター」を設置した(関連記事:図研がシリコンバレーに「図研創造センター」を開設、EDAツール開発の中核担う)。
今後、同センターを本格的に稼働させ、北米市場におけるマーケティングと販売力の強化を行っていく。具体的な戦略として、西海岸にあるタブレット端末やウェアラブル端末を手掛けるエレクトロニクスメーカーや、モバイル系プラットフォームデバイスベンダーへのアプローチなど、北米の主要ベンダーとの関係構築を進展させているという。また、解析技術を持つCAEベンダーとの戦略的パートナーシップの模索や、現地の業界団体への積極的参加、業界紙に向けた記事の投稿など、北米における知名度向上に向けた活動を行うとしている。
図研は2014年1月から、製造業に特化したプッシュ型ナレッジ(情報)共有システム「Knowledge Explorer」を販売している(関連記事:ベテラン設計者の“頭の中”を組み込む、図研のプッシュ型ナレッジ管理ツール)。これは、熟練設計者のナレッジ活用法をシステム化したツールで、モノづくりにおける技術の伝承や情報共有をITで支援する狙いがある。同社は、同製品を軸に国内の新規市場の開拓を狙うという。
勝部氏は「近年ビッグデータなど、情報を製造業にどう役立てるかが重要になってきた。このKnowledge Explorerは、年配の技術者の頭の中にあるナレッジ(情報)をどのように取り出して若い人に伝えられるかというのがテーマの製品で、非常に画期的なシステムだと思っている。これを次の大きな市場として捉え、CADやPDMだけでなく、MicrosoftのExcelやWordなど、日常的に使うソフトウェアにも対応させていく」と語った。
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