ベッコフオートメーションはセミナーイベント「Beckhoff Technology Day 2014」を開催。代表取締役社長の川野俊充氏が「インダストリー4.0最前線」をテーマに講演し工場システムの水平統合と垂直統合を訴えた。
ベッコフオートメーションは2014年5月27日、横浜市でセミナーイベント「Beckhoff Technology Day 2014」を開催。同社代表取締役社長の川野俊充氏は「インダストリー4.0」をテーマに講演し「インダストリー4.0を実現するには工場システムの水平統合と垂直統合が必要だ」と訴えた。また同社が新たに夏から国内投入を開始するリニア搬送システム「XTS」のデモ公開を行った。
同社はドイツBeckhoff Automationの日本法人。Beckhoff Automationはドイツで「インダストリー4.0」プロジェクトに参画しており、その関連から今回のイベントでは「インダストリー4.0最新動向」について紹介した。
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」は、ドイツ語で第4次産業革命を意味する。この言葉の下、ドイツ政府が2011年から、ドイツの主要企業を含む産官学の多くの企業や団体を巻き込んで、プロジェクトを立ち上げたことから大きな注目を集めている。「インダストリー4.0」の目指すところは、今までにない「スマートな工場」を実現することだ(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。
センサーネットワークなどによる現実世界(Physical System)と、サイバー空間の高いコンピューティング能力(Cyber System)を密接に連携させた「サイバーフィジカルシステム」により、工場および生産ラインが自律的に生産調整などを行い、従来の生産効率を抜本的に向上することを目指す。
ポイントとなるのはこの“自律的”という部分だ。以前からロボットや製造装置の活用により、生産の自動化は可能だったが、生産調整やライン変更などは人間が判断しなければならなかった。「インダストリー4.0」の目指す世界では、目標とする成果に向けて、機器が自律的に最適な結果になるように判断して、製品の流れを変えたり、他のラインを使うような判断を行うという。川野氏は「作られる製品がそれぞれの工程を自由に動き回るような、有機的なセル生産がインダストリー4.0の描く姿だ」と話す。
これらを実現するために必要なのが「つながる」ということだ。川野氏は「これらを実現するためには『つながる工場』となる必要がある。そのためには工場システムを垂直、水平につなげていかなければならない」と語る。
例えば、工場のシステムを水平方向に見た場合、PLCなど製造現場レベルでは「大別すると製造に携わるリアルタイム制御系と、監視やバーコードリーダーなどの非リアルタイム制御系がある」と川野氏は説明する。一方垂直方向に見た場合は、ERPやMESなどの上位のシステムがある。これらのネットワークは基本的には分離しているが、全てを統合し最適化を図る「インダストリー4.0」のような仕組みを実現するためには、これらを結ぶ必要がある。同社の製品やサービスを利用することでこの問題を解決できるという。
例えば、リアルタイム制御系では、同社はPLCやモーションコントロールを制御するソフトウェア「TwinCAT」、ネットワークはオープンネットワークである「EtherCAT」を提供しており、これらを結ぶことで、現場のネットワークを一元化することが可能。またFA機器の標準インタフェースを提供する「ORiN」との連携を実現していることから、機器や通信プロトコルなどの影響を受けずにネットワーク接続できる。さらに汎用性の高い通信規格「OPC-UA(OPC Unified Architecture)」との連携を確保していることから、上位系システムとの通信も実現できる。
川野氏は「オープンな世界は自己責任でそれに伴う問題も多いが、これらを実現することで高い生産性など競争優位を生み出すことも可能だ」と語っている。
また今回のイベントでは、夏に発売予定のリニア搬送システム「XTS」を参考展示した。XTSはリニアモーターシステムで、高速な搬送と多くの制御を同時に実現できることが特徴だとしている。
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