熱効率50%の達成が目標、国内自動車メーカー8社がエンジン技術を共同開発エコカー技術

トヨタ自動車やホンダ、日産自動車などの国内自動車メーカー8社が参加して、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの基盤技術を共同で研究開発するコンソーシアムが発足した。名称は、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE、アイス)である。

» 2014年05月20日 16時50分 公開
[朴尚洙,MONOist]
AICEが果たす役割

 国内自動車メーカー8社が参加してガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの基盤技術を共同で研究開発するコンソーシアムが発足した。名称は、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE:Research Association of Automobile Internal Combustion Engines、アイス)で、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの研究開発部門である本田技術研究所、マツダ、富士重工業、三菱自動車工業、スズキ、ダイハツ工業という国内自動車メーカー8社に加えて、日本自動車研究所も組合員となる。

 AICEでは、自動車のさらなる燃費向上と排出ガスの低減に必要な内燃機関の燃焼技術や排出ガス低減技術の研究開発テーマを自動車メーカー側で設定。この研究開発テーマに基づき、大学などの研究機関と基礎/応用研究を共同で実施する。得られた研究成果によって、自動車メーカー各社の製品開発を加速させることが狙いとなる。

 AICEが手掛けるのは、具体的な内燃機関の開発ではなく、燃焼や後処理における科学的な現象の解明やそのモデル化、評価手法の策定が中心になる。従来、国内自動車メーカーは、これらの基盤技術を自社で個別に開発していた。しかし、燃費基準や排出ガス規制が強化される中で、基盤技術の研究開発に掛かる時間やコストは増大しており、国内自動車メーカー各社のエンジン開発のスピードを鈍らせていた。

 一方、欧州の自動車メーカーは、自動車関連技術を産学官が協調して研究開発するコンソーシアムが多数あり、内燃機関の基盤技術を共同開発する仕組みもでき上がっている。ハイブリッド車や電気自動車の開発では欧州の自動車メーカーに先行している国内自動車メーカーが、内燃機関では一歩遅れているイメージがあるのは、内燃機関の基盤技術を共同開発する仕組みがなかったからだ。今回発足したAICEは、この仕組みが担うことになる。

 AICEとの共同研究により、大学などの研究機関において内燃機関に関する専門技術力の向上も図れる。そして、内燃機関に関わる人材育成も促進されるという期待もある。

AICEが果たす役割 AICEが果たす役割(クリックで拡大) 出典:AICE

 AICEの開発目標はエンジンの最高熱効率を高めることだ。現時点の内燃機関の最高熱効率は、非ハイブリッド車向けのガソリンエンジンで40%弱、ハイブリッド車向けのガソリンエンジンで40%前後、クリーンディーゼルエンジンで40数%となっている。これらを2020年までに50%に高めたいとしている。CO2排出量の低減についても、2020年までに2010年比で30%削減したい考えだ。

3つの研究開発テーマ

 現時点で挙がっているAICEの研究開発テーマは大まかに分けて3つある。1つ目は「ディーゼル後処理技術の高度化研究」である。ディーゼルエンジンは、燃焼時にPM2.5に代表される粒子状物質(PM)やNOxが発生するが、これらをEGR(排出ガス再循環)や触媒などの後処理装置で低減している。AICEでは、後処理の際に起こる現象の解明やモデル化を行うとともに、予測シミュレーションや評価手法なども開発する。

 2つ目は「自動車用内燃機関の燃焼技術の高度化研究」で、内燃機関の熱効率を向上しようとすると発生しやすくなるノッキングやPM発生といった現象の解明、摩擦(フリクション)低減技術の評価などを行う。

 3つ目の「エンジン性能調査」では、海外自動車メーカーのエンジン性能を調査する。燃費や排出ガスだけでなく、エンジン部品の摩擦力測定なども行うという。

 2014年度の事業費は約10億円。このうち7.5億円はディーゼル後処理技術の高度化研究に費やす。ただし同研究には、経済産業省から補助事業費が5億円得られることになっている。これを除く5億円の事業費は参加企業が支払う。

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