トヨタ自動車が開発した「高熱効率・低燃費エンジン群」は、同社がハイブリッド車専用エンジンに採用しているアトキンソンサイクル化や高圧縮比化の技術を、通常のガソリンエンジンにも適用したものだ。しかし、走行モーターを使わない通常のガソリンエンジンに求められる走行性能を確保するには、さまざまな工夫が必要だった。
トヨタ自動車は2014年4月10日、東京都内で会見を開き、従来比で10%以上の燃費向上が可能な「高熱効率・低燃費エンジン群」(関連記事:トヨタ自動車が高熱効率エンジンを新開発、燃費を10%以上向上)について説明した。
会見に登壇したのは、2013年4月に設置されたユニットセンターでユニット統括部 パワートレーン企画室 主査を務める足立昌司氏である。ユニットセンターでは、エンジンやトランスミッション、ハイブリッドシステムをはじめとするユニット事業について、企画/開発から生産技術、生産機能を集約することにより、世界一の競争力を持つユニットの開発と、迅速な製品化の実現を目指している。
足立氏は、「今回発表した高熱効率・低燃費エンジン群は、2015年度末までの2年間で14機種を展開するというかなりアグレッシブな計画になっている。これは、ユニットセンターの設置による開発効率の最大化によって実現可能になった」と強調する。
高熱効率・低燃費エンジン群は、ユニットセンターの設置と同時に完成した「パワートレーン共同開発棟」で開発された。同棟には約500人の技術者が、エンジンやトランスミッション、ハイブリッドシステムなどの開発に従事しており、建屋内で試作・評価を行えるという。
エンジンの性能をトルク曲線で見た場合には、熱効率の高い領域が存在する。今回の高熱効率・低燃費エンジン群の開発では、この熱効率の高い領域について、最大熱効率をさらに高めるとともに、熱効率の高い領域の範囲を広げて、従来比で10%以上燃費を向上し、最大熱効率で世界トップレベルを達成することが目標となった。
この目標を達成する上で重要な役割を果たしたのが、トヨタ自動車が得意とするハイブリッド車専用エンジンで培ってきたアトキンソンサイクル化や高圧縮比化の技術である。「プリウス」や「アクア」といったハイブリッド車のガソリンエンジンは、ディーゼルエンジン並みの熱効率を達成している。これと同等の熱効率を、ハイブリッドシステムと組み合わせない従来型のガソリンエンジン(コンベンショナルエンジン、コンベエンジン)でも実現しようというわけだ。
ただし、ハイブリッド車専用エンジンは、アトキンソンサイクル化に加えて、高圧縮比化によるノッキングを避ける目的もあって、コンベエンジンと比べるとトルク性能などが低い。ハイブリッド車の場合、走行モーターによってトルクや出力を補えるので問題はないが、走行モーターを使わないコンベエンジンは別の方法を考える必要がある。そこで、「コンベエンジンの開発を続ける中で磨き上げてきた技術」(足立氏)を基にした燃焼改良によってこの問題を解決した。
もちろん、エンジンの仕事量を表す熱効率を高めるには、ポンプ、排気、冷却、摩擦といった損失も低減する必要がある。高熱効率・低燃費エンジン群では損失低減も図られている。
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