3次元データを立体視可能なVRシステム「zSpace」の製品説明会が開催された。同製品は、自分の目の前にあるかのような3次元モデルをスタイラスで突いて、自由に回して眺めることが可能だ。
米zSpace(旧・米Infinite Z社)は2014年4月18日、没入型ホログラフィック・ディスプレイシステム「zSpace」に関する記者説明会を開催し、製品についてデモを交えて紹介した。
zSpaceはVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)システムであり、24インチの専用ディスプレイを立体視可能な偏光メガネを掛けてのぞき、赤外線センサーと加速度計が仕込まれた専用スタイラスを使って3次元モデルを操作する。
専用ディスプレイに備えた2つのカメラがユーザーの視線(偏光メガネの位置や動く方向)をリアルタイムにセンシングし、3次元モデルの動きへ反映させている。
スタイラスの先端で3次元モデルを突き、回したり裏返したりしながら眺められる。また顔を3次元モデルに突っ込む動きをすると、その中に入り込んだかのように断面が切られる。モデル同士の干渉認識も設定可能だ。このような動きはごく基本的なもので、アプリケーション開発次第でさまざまな動きや機能が追加できるという。
zSpaceは従来のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)による仕組みと基本は同じ技術ということだが、同製品では「実際の視覚とバーチャルな動作とのタイムラグを極限に小さくすることで、人の脳に負担が掛からないようにしている」(米zSpace CTO デイヴィット・チャベス氏)ということだ。認識のタイムラグが大きいと、気分が悪くなる、めまいを起こすなど不調を来しやすくなる。
zSpaceは現在、ディスプレイと偏光メガネ、スタイラスのハードウェア3点と、アプリケーション開発キット(SDK)をセットで企業(パートナー)に提供する形を取っている。価格はハードウェアの代金として約80万円だが、今後の市場への浸透具合によってはさらに安くなっていく可能性はあるという。日本での販売体制などについては現在いくつかの企業と相談中であり、「現在準備中なので、今後の発表に期待してほしい」(zSpace アジア太平洋事業開発 シニアディレクター ロン・タムラ氏)ということだ。
なお2013年10月23日に富士通が「ものづくりソリューション」の体系化について発表し、その中のソリューションの1つとしてzSpaceが登場しているが、それ以後、zSpaceについて具体的な発表はない(関連記事:富士通、製造業支援を強化――3Dプリンタ試作やビッグデータ分析、製造受託も)。
CAD系のパートナー企業には、ダッソー・システムズ(以下、ダッソー)、シーメンスPLMソフトウェア、オートデスクなどがいる。例えばダッソーでは、心臓の3次元シミュレーションシステム「The Living Heart Project」や、3次元ビュワー「3DVIA Composer」との連携アプリケーションがある(関連記事:心臓の3次元モデルを“手元に引き寄せて”観察、ダッソーがデモを披露)。
zSpaceのパートナーには3次元ジェスチャー認識技術を開発するLeap Motionがいる。同社は、手指の動作を認識することで、スタイラスやマウスなどの入力デバイスなしで画面操作可能な技術「Leap Motion」(社名と同名称)を開発している。こちらはzSpaceとも連動可能ということだ。2014年2月に、HPからLeap Motionを内蔵したノートPC「HP ENVY17-j100 Leap Motion SE」が登場している。アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所も、Leap Motionを用いて次世代月面車を操作する研究をしている。
パートナー数は現時点約1400社で、約2000のアプリケーションが存在する。パートナーの分野は航空・宇宙、医療、工業デザイン、解析・シミュレーション、教育など多岐にわたるということだ。
ちなみに、Infinite Z社時代である2010年当時のzSpaceはまだ開発中で、以下の写真のように今より大掛かりなシステムだった。2010年1月に米国で開催された「SolidWorks World 2010」内のパートナー展示(デモ出展)では、ミッドレンジ3次元CAD「SolidWorks」との連携例や、医療現場の手術シミュレーションの事例を紹介していた(関連記事:3次元CADも「見える」から「そこにいる」へ)。
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