より具体的にMotion Control FBを理解できるように、実際に使われている機器をベースに説明します。ここではオムロンの「Sysmacマシンオートメーションコントローラ NJシリーズ」と「マシンオートメーションソフトウェア Sysmac Studio」の場合について紹介します(関連記事:オムロン、インテル Atom搭載の次世代マシンオートメーションコントローラ発表)。
NJシリーズは、CPUにインテルのAtomプロセッサを採用し、I/O機器やドライブ用のネットワークにはイーサネットベースのEtherCATを採用するなど、オープンなアーキテクチャを導入していることが特徴です。また、Sysmac Studioは「IEC 61131-3」に準拠したプログラミング環境を提供しています。NJシリーズは、PLCopenに準拠したモーション制御命令(以下、MC命令)を搭載しています。MC命令には、PLCopenの認証を受けたMC命令(表3)と、オムロン独自のMC命令を提供しています。
※円弧補間は、独自MC命令を提供しています。
技術仕様書にはベンダー依存の項目があります。高精度なモーション制御の実現とプログラムの可読性向上の観点から、ベンダー依存項目に対してNJシリーズ独自の仕様を定義しています。その内容を表4に示します。
図1のギア機構を、NJシリーズのMC命令を用いてLDで実装した例を図2に示します。主軸(MC_Axis000)は速度制御 MC_MoveVelocity、従軸(MC_Axis001)はギア動作MC_GearInを用います。また、軸状態や軸位置の取得には、軸変数を用います。
以下の条件をすべて満足したときに、従軸はギア比1:2のギア動作を開始します。
図2の通り、メモリエリアやリレーエリアのアドレスなどハードウェア依存の項目は含まれていないことが分かります。また、主軸の速度制御、従軸のギア動作ともそれぞれ1つの命令で実現でき、視認性が高いことが分かります。
動作結果を図3に示します。主軸が目標位置に達しAX0_INVEL(ピンク色)がTRUEになった後、主軸のフィードバック現在位置(黄色)が180°を超えたところでMC_GearInが起動され、従軸の加速に伴い従軸のフィードバック現在位置(黄緑色)が変化しています。主軸と従軸が同期したらAX1_GEARIN_INGEAR(橙色)がTRUEとなり、以降は1:2のギア動作を行っていることが分かります。
今回は、PLCopenのMotion Control FBについて、具体的な機器とMC命令を事例として説明しました。Motion Control FBの狙いは、動作仕様やインタフェース仕様の標準化によるソフトウェア再利用性の向上と、トレーニングコストの低減です。加えて、視認性や保守効率が高い点もメリットとして挙げられます。
グローバル化に伴い、国際規格に準拠したPLCやモーションコントローラが増えると見られる中、今回の記事がPLCopen準拠コントローラを選定される際の参考になれば幸いです。
次回は、PLCopenが提唱するSafety FBについて紹介します。
※) PLCopenおよび関連するロゴマークはPLCopenが所有する登録商標です。
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