積水化学工業は、一般的なリチウムイオン電池に用いられている電解液と同等クラスのリチウムイオン電導性を持つゲルタイプ電解質などを用いて、リチウムイオン電池の容量を従来比で3倍まで高めると同時に、生産速度も同10倍に向上できる技術を開発した。2014年夏をめどにサンプル提供を始め、2015年度には量産販売したい考え。
積水化学工業は2013年12月3日、リチウムイオン電池の容量を従来比で3倍まで高めると同時に、生産速度も同10倍に向上できる技術を開発したと発表した。一般的なリチウムイオン電池に用いられている電解液と同等クラスのリチウムイオン電導性を持つゲルタイプ電解質と、高容量化が可能なケイ素系負極材を採用することにより容量の向上が可能になった。ゲルタイプ電解質は塗布プロセスを適用できるため、生産性も高められるという。2014年夏をめどに電池メーカーなどへのサンプル提供を始め、2015年度には量産販売したい考え。「エコプロダクツ2013」(2013年12月12〜14日、東京ビッグサイト)で技術成果を展示する予定だ。
現行のリチウムイオン電池は、正極材料にリチウム金属酸化物、負極材料にグラファイトなどの炭素系素材、リチウムイオンの電気伝導を担う電解質として電解液を用いるのが一般的だ。特に電解液については、液漏れ対策のための封止が必要な上、万が一破壊した場合の安全性確保は極めて難しいこともあって、電解液を固体化する研究が進められてきた。例えば、リチウムイオン電池とともに利用されているリチウムポリマー電池は、高分子材料を用いた固体の電解質を溶媒でゲル化したポリマー電解質を採用している。しかし、ポリマー電解質のリチウムイオン伝導性が低いこともあって、リチウムイオン電池よりも性能が劣るという問題があった。
今回積水化学工業が発表した技術も、リチウムポリマー電池と同様に、ゲルタイプのポリマー電解質を採用している。しかし、従来のポリマー電解質と比べて10倍ものリチウムイオン電導性を有する新規の有機ポリマー電解質材料を採用したことにより、ゲル状でありながらリチウムイオン電池の電解液と同等の性能を実現した。
さらに、このゲルタイプ電解質を用いれば、従来のリチウムイオン電池製造で電解液を注入する真空注入プロセスに替えて、連続塗工プロセスを適用できる。真空注入プロセスと比べて生産速度は約10倍になるという。
ゲルタイプ電解質と合わせて、高容量化が可能なケイ素系負極材料も開発した。そして、ゲルタイプ電解質と連続塗工プロセス、高容量ケイ素系負極材料を組み合わせてリチウムイオン電池セルを試作したところ、体積エネルギー密度を900Wh/l(リットル)まで高められるめどが立ったという。電気自動車などに搭載されているリチウムイオン電池セルの体積エネルギー密度は200〜300Wh/l程度であり、これらと比べて同じ容積で3倍以上の容量を、同じ容量であれば3分の1の容積を実現できることになる。
また、連続塗工プロセスを用いれば、フレキシブル、薄型、長尺、大面積のフィルム型リチウムイオン電池を製造できる。積水化学工業の想定サイズは、長さ200cm、幅30cmまで、厚み0.3〜5mmとなっている。
なお、この研究成果は、2012年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している「リチウムイオン電池応用・実用化先端技術開発事業」の支援を受けて進められている。
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