少し話題は変わりますが、先日、HP(ヒューレット・パッカード)から「Leap Motion」の技術を搭載したノートPCが発表されました。また、インテルの「Intel Perceptual Computing SDK」についても、PCへの標準搭載に向けた動きがあるようです。
では、PCにモーションセンサーが標準搭載されると、現在のPCと比較して何が、どのように変わっていくのでしょうか?
筆者自身、すぐに具体的な活用シーンやアイデアが思い付きませんが、これまで以上に、モーションセンサーがより身近な存在になることは間違いありません。モーションセンサーがPCに標準搭載されることで、そこからまた新しい活用のアイデアが生まれてくることでしょう。
組み込み業界でビジネスをしている筆者ですが、最近、組み込み関連企業からもKinectの紹介依頼や問い合わせを数多くいただいています。それだけ、皆さんの関心が高いということなのでしょうが、組み込み装置としてのモーションセンサーデバイス活用は「まだこれから」といった感じです。こう考える理由は、2つあります。
1つは、センサーデバイスの供給面での課題です。組み込み装置として考えた場合、長期供給が求められるケースが多々あります。しかし、Kinectをはじめとするモーションセンサーデバイスは供給期間が保証されていません。そのため、10年、15年と長期間利用される組み込み装置での採用は最適とはいえません。また、センサーデバイスを装置に組み込めるような、モジュール(部品)としての提供が進んでいないことも課題として挙げられます。
2つ目は、センサーデバイスの耐久性です。もともとコンシューマー向けのデバイスということもあり、動作環境温度や耐環境性の面においては弱い部分があります。そのため、センサーデバイス活用のアイデアがあったとしても、組み込み装置としての実運用に耐えられるかどうかといった点も十分に考慮する必要があります。
このように、組み込み用途でのモーションセンサーデバイス活用には課題がありますが、まったくもって可能性がないかというとそんなことはありません。
連載第2回でも紹介したように、既に家庭用TVやスマートフォンなどにモーションセンサーが採用されているケースもあります。また、より組み込み的な事例として、カーナビゲーションシステム(カーナビ)での採用が挙げられます。パイオニアのカーナビ「楽ナビ」では、画面に手を近づけたり、手を振ったりして操作できる「エアージェスチャー」という機能が搭載されています。このように組み込み装置としての導入事例も登場しつつあります。
課題にも挙げましたが、将来的には、装置に組み込むための“モジュール化”が進むと考えられています。実際、PrimeSenseの超小型3D深度センサー「CAPRI」は組み込み向けモジュールとして提供する準備が進められています。同様に、他社からも組み込み向けのセンサーモジュールが登場しつつありますので、今後はむしろ“組み込み市場での活用”に大きな可能性があると考えて間違いないでしょう。
今回は、モーションセンサーデバイスのUI以外での活用例を紹介してきました。非接触・ジェスチャーによる操作手段としてだけではなく、さまざまな活用の可能性があることをご理解いただけたかと思います。
さて次回は、各種モーションセンサーデバイスの機能や特性を比較しながら、どのような場面で、どのデバイスを選択するのが最適かを解説していきたいと思います。ご期待ください! (次回に続く)
茂出木裕也(もでき ゆうや)
東京エレクトロン デバイス エンベデッドソリューション部
フィールドアプリケーションエンジニア
山形県出身。Microsoft Windows Embedded MVP(Most Valuable Professional)アワード受賞者。x86アーキテクチャ・ファームウェア開発(BIOS)のプログラマー職を経て、現在はWindows Embedded OSの技術サポートに従事。組み込み業界でのKinectの可能性にも注目し、各種イベントやセミナーではスピーカーを務める。
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