浜松ホトニクスと早稲田大学は、科学技術振興機構(JST) 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、高感度で実用的な角度分解能を併せ持つ、携帯可能なガンマ線撮像用「コンプトンカメラ」の実用化に成功した。
浜松ホトニクスと早稲田大学は2013年9月10日、科学技術振興機構(JST) 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、高感度で実用的な角度分解能を備え、容易に携帯可能なガンマ線撮像用「コンプトンカメラ」の実用化に成功したことを発表した。浜松ホトニクスがコンプトンカメラの試作を、早稲田大学が装置構成と画像処理の最適化・評価を担当した。
浜松ホトニクス独自の高感度半導体光検出素子(MPPC)と高密度で発光特性の良好なシンチレータ(放射線エネルギーを吸収して蛍光を発する物質)を組み合わせた独自方式のガンマ線検出器を開発。これにより、小型・軽量化の実現に加え、大幅な低価格化に成功したという。同製品の重さは1.9kg。遮蔽体が必要な重さ10kg以上するピンホール方式のガンマ線カメラよりもはるかに軽量であり、従来のコンプトンカメラと比べても約4分の1の軽量化を実現する。外形寸法も15×15×13.5cmとコンパクトで持ち運びか可能だ。
同製品は、ガンマ線がシンチレータ中にある電子と衝突し、エネルギーの一部を失って飛行方向を変えるコンプトン散乱の原理を利用して、ガンマ線の飛来方向とそのエネルギーを同時に測定し、ガンマ線を放出する放射性セシウム134、同137の分布をリアルタイムに近い短時間で画像化するもの。計測に必要な信号処理回路やバイアス電源、A/D変換器などを全て本体に内蔵し、PCにUSB接続するだけで電源供給され、ガンマ線の分布を逆投影法と統計的画像再構成(MLEM)法の2種類で画像化できる。
居住制限区域に相当する3.8〜9.5μSv/h程度の環境下で、放射性物質の集積(ホットスポット)を数分程度で撮像可能。この特長を生かし、迅速に放射性物質の分布を画像化すれば、除染前後の効果をすぐに確認できるため、除染作業の効率化に役立てられる。
当面は、福島県の除染が必要な自治体に限定して、同年11月15日からモニター用として貸し出しを開始。2014年2月より販売を開始する。価格は1050万円(税込)。発売1年目に10台、2年目に200台の販売目標を掲げる。
なお、同製品は同年11月7日から3日間、アクトシティ浜松(浜松市中区)で5年ぶりに開催される浜松ホトニクス総合展示会「フォトンフェア2013」に出展される予定だ。
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