自動車ジャーナリストの今井優杏さんが、独自の切り口で最新のエコカーや搭載技術を紹介する本連載。今回は、電池セルの不具合による販売中止からの巻き返しを目指す、プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」を取り上げる。
乗り出してすぐ「わぁ! 宇宙船みたい!」なんて新鮮に驚いた三菱自動車のプラグインハイブリッド車(PHEV)「アウトランダーPHEV」。ローンチは2012年の12月26日でした。
や、いくら私が自動車ジャーナリストでもさすがに宇宙船なんて試乗したことないですが、何ちゅうか異次元のドライブフィールと言いますか、それを短絡的に、「宇宙っぽい」と感じてしまったわけです。
まるでお尻ごと持ち上げられるかのような……そうね、例えるならスキーのときに乗ったリフトがふわっと浮き上がるかのような、持ち上げられるような加速とでも言うのかしら。
体をシートに押し付けられるような弩級の加速というよりも、も〜っと滑らかで浮遊感のある、途切れることを知らないモーターの生む強大なトルク。その独特の加速の膨らみは特に、勾配のきつい上り坂などで存分な威力を発揮してくれます。
数字で言えばアウトランダーPHEVのモーターの最大トルクは137Nm。電気自動車(EV)界の韋駄天、Tesla Motorsの「Roadster(ロードスター)」の370Nmとは比べ物になりません。しかし、何といってもアウトランダーという小山のごとき重量1800kg級のボディがモーターだけでもモリモリっと動くのですから、数字以上に迫力ある挙動です。加えて、高いシートポジションから生まれる爽快な高さのアイポイントで感じる加速は、繰り返すようですがちょっと本当に異次元な感じ。
まぁその分ブレーキは、この重量を受け止めることに加えて回生機能があることも含め若干繊細で、ちょっと乱暴に踏み込んだら過敏に減速する、いわゆる“カックンブレーキ気味”ではあるのですが、いやいや、慣れればむしろしっかり効く信頼感の高いブレーキだと思えなくもない(“カックン”としっかり停まるのは別ベクトルですが、初期にキュッと効けば、タッチとしては停めやすいと思います)。
要するにあらゆるマイナス要素を多分なメリットでカバーしちゃえるというイイクルマなんです。
アウトランダーPHEVは“自分で発電するEV”と発表された通り、
という3つの走行モードを備えます。SUV(スポーツ多目的車)として世界初のPHEVとしても注目を集めました。
燃料がうそのように高騰しつつある今、燃費と使いやすさを両立したいという絶妙な消費者心理をくまなくカバーするこのうたい文句とパッケージ! ピンポイントでハートをグサグサ突かれてしまうこと請け合いですよね。
アウトランダーPHEVの場合、放電率の低いリチウムイオン電池を採用しているので、一度充電した電力が自然放電されることがほぼありません。自宅に充電器がない、あるいは自宅の車庫に電源がないユーザーでも、会社帰りやドライブ帰りに近くの充電スタンド(最近では高速道路のパーキングエリアやコインパーキング、コンビニなど、設置ポイントも増えました)で急速充電しておき(約30分間でバッテリーパックの容量の約80%まで充電できます)、そのまま乗って帰れば次のドライブの際にもEV走行モードで快適に出発することができます。充電しない場合には、いっそ割り切ってハイブリッド車として使うのもありです。
で、普通に乗っていればクルマの方が勝手に低燃費な走行を選んでくれ、充電モードなり減速時のエネルギー回生なりで燃料消費を極力抑えたエコドライブをしてくれるってわけ。
もちろんごく普通の家庭にある100V電源を使えば13時間で満充電になりますし、200V電源なら満充電までは4時間で済みます。
ね、魅力的でしょ?
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