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» 2013年06月04日 09時30分 公開

M2Mとクラウドのコンビネーションで実現する――地球に優しい“攻めの農業”ICTで農業を救えるか!?(4/4 ページ)

[八木沢篤,MONOist]
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農業にWindows 8、Windows Azure

キーボードアレルギーをWindows 8 タブレット端末で解決

 農業従事者は、「Windows 8」搭載のタブレット端末から専用アプリケーション(Windows 8版「ZeRo.agri」)を起動することで、各種情報の閲覧や設定が行える。

 具体的には、グラフとして「日射量(W/m2)」「気温(℃)」「湿度(%)」「地温(℃)」「土中水分量」「EC:土壌中の肥料養分濃度(S/m)」の6つを確認できる他、灌水状況として土中水分量に加え、「灌水量」も表示でき、メニューから簡単な操作で灌水の指定値を変更することも可能になっている。また、オプション機能として、カメラの定点撮影により、農作物の成長過程を画像で確認することもできる。

 このタブレット端末用のアプリケーションを開発したのが、セカンドファクトリーだ。可搬性の高いタブレット端末を採用し、(事務所ではなく)現場にいながら、指1本で操作できることを目指したという。「温室の最新状況を指1本で確認・操作でき、1画面でキビキビと閲覧できることを目指し、Windows 8のUI(User Interface)技術をフル活用した。また、クラウド上のデータを単なる数値の羅列として見せるのではなく、農家の方でも感覚的に意味を引き出せるような表示の工夫を施している」と井原氏は説明する。

Windows 8版 ZeRo.agri Windows 8版「ZeRo.agri」のデモの様子。報告会ではデモ機として、Windows RT搭載の「Surface」が用いられていた
デモ(1)デモ(2) Windows 8版「ZeRo.agri」の画面イメージ

デモ(3)デモ(4) タブレット端末側から灌水設定も行える。操作は指1本でスライドバーを上下させるだけ。数値だけでなく、「少なめ」「適量」「多め」などのガイドも連動して表示される

農業でもクラウド! 支援しやすい環境が整いつつある

セカンドファクトリー プロダクト&サービス事業本部 井原亮二氏日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏 (左)セカンドファクトリー プロダクト&サービス事業本部 井原亮二氏/(右)日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏

 そして、今回のシステムの裏側で活躍しているのがWindows Azureである。日本マイクロソフトの加治佐氏は次のようにコメントした。

 「今やクラウドは、社会基盤に組み込まれ、いつでもどこでも安く、安心して利用できるものになった。このクラウドの波がさまざまな分野で広がっており、農業でも活用されていく。今回、このプロジェクトで使用しているWindows Azureは、世界80カ国以上で利用可能で、データセンターが世界中にある。離れた場所から、多様な端末から、クラウドを通して、さまざまなサービスを実行したり、データを参照したりできる。しかも、エンタープライズの世界(ビジネスの世界)で培われた高度なセキュリティの下、安心・安全に利用できる」(加治佐氏)。

 さらに、ICTが社会にもたらす変化、そしてICTと農業の可能性について、加治佐氏は「ICTが活躍する場は、これまで第2次・第3次産業が中心だったが、『クラウド』『センサー』『デバイス』といった技術が進化していき、第1次産業(農業)に対しても、“支援しやすい環境”が整ってきた。今回のプロジェクトは、まだ始まりではあるが、これからの農業を変えていく大きな可能性を秘めている」と期待を込める。そして、“記録をする”“見る”“共有する”という観点から、クライアント端末として、Windows 8が最適だとし、その先の展開として、農業においても、マイクロソフトの組み込み機器向けOS「Windows Embedded 8 ファミリ」やモーションセンサーデバイス「Kinect for Windows センサー」の活用・連携なども十分に考えられるとした。



 日本マイクロソフトの加治佐氏の言葉にあるように、今回の取り組みは“始まり”である。近未来の農業のあるべき姿とは何か――。

 ICTベンダーの立場から、ルートレック・ネットワークスの佐々木氏は「これからは、多くの中小農家をきちんと守り、その中で培われてきた農業技術(経験と勘)の伝承を支援し、伝統ある地域社会の形を維持・発展させていくことが重要。これと同時に、今回4社で取り組んできたものを“プラットフォーム化”し、ICTに携わる多くの企業が農業分野に新規参入しやすい土壌を作ることが必要だと思う。そうすることで、農業に新しいイノベーションが生まれてくるはずだ」と意欲をみせる。そして、「将来、出来上がった仕組み(農業システム)をシステムごと海外に輸出して、日本の品質に近い作物を現地で生産し、販売するような展開を目指していきたい」(佐々木氏)と語った。

トマト(1)トマト(2) 温室ではトマトが栽培されていた。取材時はまだ青い状態だった

 なお、報告会では、日本の国内政策との関連として、農林水産省のプロジェクト「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」(平成25〜27年度)に採択された、ICT養液土耕システムの高度化研究についても紹介。本稿で説明したシステムをマザーハウスと呼ばれる温室に設置し、そこで収集、分析・解析されたデータを、キッズハウス(こちらは簡易的な装置のみ設置)と呼ばれる他の温室にも共有(横展開)できる取り組みを、明治大学、岩手大学、ルートレック・ネットワークスの3社で行っていくという。

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