表2-3の2元配置データは、因子Aと因子Bが互いに独立(直交)するように収集されますから、データ表の縦と横を独立に集計ができます。詳細説明は省きますが、2元配置の完備型のデータであれば、最終的には以下の式のように4個の情報に分解することができることを覚えてください。
ST = Sm+SA+SB+Se
自由度f は 4=1+1+1+1
このようにきれいに分解できるためには、2元配置で要因が直交するように管理されていることが条件です。要因が管理されていない場合は、このような分解はできません。
悪い例としては、管理されていない環境下で長時間の単純な繰り返しを行ったデータなどがあります。なぜダメかというと、データのばらつきを作り出す要因が、ランダムだからです。
環境温度が結果に影響する場合なら、どのデータを取ったときの温度が何度であるかが管理されていなければ解析できません。この場合は、平均値しか意味がありません。従ってSm以外のばらつきは、たとえ自由度が3あっても、これ以上に分解することができないのです。
ポイント: 直交していれば、情報は分離できる
さて、2元配置の場合のSeとは、何でしょうか。自由度が残っていますから、何らかの情報があるはずです。STから、平均値の効果と因子Aの効果と因子Bの効果を除くと、一体何が残っているのでしょうか。
考えられるのは、AとBの交互作用、ないしはその他未知の効果によるばらつきです。交互作用は普通大きくはないと考えるので、その他の効果によるばらつきをSeと見なす場合が多いのです。この場合Seは残差と呼び、計算可能な変動を使って次式で求めます。
Se =ST−Sm−SA−SB
〈残差〉=〈全変動〉−〈平均値の変動〉−〈因子Aの変動〉−〈因子Bの変動〉
元のデータであるy1〜y4が、もし測定誤差もない理想的な測定値で、かつ因子のAとBの間に交互作用がなければ、本来の残差Se=0になります。
現実にはSe=0になることはありませんから、Seの大きさを知ることで、データy1〜y4が、理想からどれだけずれているかが分かることになります。つまり残差Seとは、コントロールされていない未知の要因からデータが受けている影響度になります。この残差Seを求めることが、わざわざ2乗和の形にして、変動という概念も導入して、解析する方法の最終目的なのです。
次回は、変動の分解を視覚的に説明します。そして、タグチメソッドの中心思想の1つであるSN比の概念を説明しましょう。
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