未然防止と再発防止は、似ているようでまったく別の思想が必要。具体事例を見ればタグチメソッドの目指す未然防止の発想がよく分かる!
いま、モノづくりは大きな転換期を迎えています。そんな中で、タグチメソッドまたは品質工学と呼ばれる考え方が多くの企業から注目されています。同時に、多くの誤解も存在します。タグチメソッドは開発設計部門の技術者を対象として、品質管理(QC)の限界を超えてリコール撲滅を狙う考え方なのです。(編集部)
前回は「1. 注目され、そして誤解されているタグチメソッド」「2. 従来型QCの限界とTQMへの展開」について見てきました。今回はタグチメソッドの基本思想とその実践手法について紹介していきます。
タグチメソッドは、設計段階で活用する未然防止の手法であることを説明しました。しかし、未然防止は、口でいうほど簡単ではありません。
今回は、未然防止の基本的な考え方を解説しましょう。未然防止に取り組むには、根本的にパラダイムシフト(思考枠組みの変革)が必要なのです。
未然防止と再発防止は、問題が発生する前に防止する意味では似ています。しかし、両者には決定的な違いがあります。未然に防止するということは、未知の不具合も対象となる点です。
未経験の現象に対しては、再発防止の考え方は役に立ちません。未然防止には、少なくとも2つの課題を解決する必要があるからです。
1点目は、いうまでもなく、いままでに経験してない不具合現象を、「未然に」防止しなければならない点です。
以前に顕在化した問題をベースにした問題解決法では、似たような不具合点の再発防止しかできません。つまり、未知の不具合現象(従って原因も不明)に対して有効な対策をどうするのか、ということが第1点目の課題です。
もう1つの課題は、顕在化していない不具合を見つけ出すために膨大な時間とデータが必要となる点です。
未然防止ではあらゆる状況が考慮の対象ですから、必然的に非常に多くのデータが必要となります。従来の信頼性試験では、数カ月――場合によっては1年以上の歳月をかけてテストをしてきました。それでもすべての不具合点を評価できたわけではありません。
未然防止では、さらに未知の現象にまで対象を広げるのですから、いままで以上の長時間と大量のデータ数が必要となるでしょう。いままでの方法論は、もはや現実的ではありません。立ちはだかる時間とデータ数の壁に対して、どうすればいいか、というのが第2点目の課題です。
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