データから正しく情報を取り出す方法を知っていますか?タグチメソッドのデータを解析しよう(2)(3/5 ページ)

» 2013年05月31日 09時00分 公開

2−2.自由度とは情報の数

データの個数には意味がある

 ここで自由度という言葉を覚えてください。「f」 という記号を使います。この言葉も分かりにくい部分かもしれません。しかし、本質が分かれば簡単です。日常で使う自由度という言葉の意味は、自由にできる裁量や範囲の大きさのことです。そして、タグチメソッドにおける自由度も、ほぼ同じ意味で使います。

 データは、1つ1つが何らかの情報を持っています。例えば、データが1個しかなくても、これから同じ条件で多数のデータを集めると、恐らく平均値はその1個の値に近い値になるだろうと想像できます。つまり平均値に関する情報を持っているのです。例えば、ある1個の部品の重さを計測したら65gであった場合、この部品の平均的重量は恐らく65g前後で、100gや30gと出てきたら「それは不良品だろう」と、容易に推測できます。データが1個でも、この程度の判断はできるのです。

 では2つの品物があって、それぞれの重量が64gと62gだったとしたらどうでしょう。まず、重量の平均値は63gぐらいだろうと当たりが付けられます。そして、ばらつきも数gぐらいだろうと予測できます。つまり、2個のデータは平均値とばらつきの2つの情報を持っているということです。データが2倍になると得られる情報も増えます。データが3個の場合には、さらに情報が増えるはずです。

 つまり、2個のデータの全変動STには2つの情報が入っており、3個のデータの全変動STの中に3つの情報が入っていると考えられるのです。このようにデータに含まれている情報の数を、自由度f で表現するのです。

自由度は加算減算ができる

 自由度はデータの塊が持っている情報の数ですから、情報を引き出してしまうと、銀行口座から預金を引き出た後のように、残っている情報が減ってしまいます。従って自由度も変化します。つまり、自由度は足し算や引き算ができるのです。具体的には、次のように行います。

 データが3つの場合、総変動STは3個の情報を持っています。自由度f は3です。さてデータの平均値は1個の数値ですから、平均値の変動は1個の情報を持っていると見なします。つまり平均値は自由度を1つ占有します。従ってSe = ST − Smで考えると、誤差変動Seには3−1=2で2つの情報が残っていることになります。

 このように、独立した情報をどれだけ持っているかを示すのが自由度です。簡単ですね。数学では階数という言葉も使う場合もありますから、もっと分かりにくいでしょう。ですから「自由度」と覚えてください。

ポイント: 自由度は、加減計算ができる

自由度が加算減算できる理由

 「自由」という言葉を使うのは、以下の理由があります。自由という意味を理解すると、自由度が加減演算できる理由も分かります。

 上で説明したデータが3個の例で、ばらつきの変動の自由度が2になる理由を考えてみましょう。本来、3個のデータa、b、cはお互いに独立のはずですから、相互の値に無関係に自分の値を決められます。データa が幾つだから、データb は幾つでなければならないという関係ではないはずです。だから全自由度は3です。

 しかし、平均値が関係してくると、独立ではなくなります。a+b+c=3m(m;平均値)という「縛り」が入るからです。a とb の2つの値が決まった時点で、3つ目のc の自由はなくなります。平均値が決まっているので「自動的に」cの値が決定されるからです。つまり、この場合の自由度は2なのです。平均値の変動という情報を取り出してしまうと、残りの自由度が1つ減って2になってしまうのです。

 ばらつきの変動も全く同じ事情です。ばらつきとは平均値からの隔たりですから、当然ながら平均値からの縛りを受けてしまいます。

 自由度の加算と減算ができる理由は了解できたでしょうか。

自由度の決め方

 このように自由度とは、変動という塊に含まれる独立した情報の数を示します。では自由度は、どうやれば分かるのでしょうか。次に、その方法を説明します。

 方法は簡単です。式の中で2乗の項の数を数えればいいのです。

 例えば数式2-3の誤差変動Seの自由度を求めてみましょう。総変動STにはa2とb2とc2の2乗の項が3個ありますから、STの自由度は3です。平均値の変動Smには2乗の項が1個しかありませんから、自由度は1です。従って誤差変動の自由度は、3-1=2 となるのです。簡単ですね。

 今後出てくる式で、2乗の項数を数えてみてください。それが自由度になります。

ポイント: 自由度は、変動の計算式で2乗の項の数に相当する

 さて、3個のデータから計算された自由度2のばらつきの変動には、2つの情報が含まれていることが分かりました。では、この2つの情報を、さらに分離することはできるのでしょうか。この場合は残念ながら無理です。

 しかし、あらかじめデータの取得方法を工夫しておけば可能です。次にその方法を説明します。効率よく情報を取り出す、データの取り方です。

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