防災科研が進める「日本海溝海底地震津波観測システム」とは?NECが海洋調査・海底観測ユニットの開発を受注

NECは防災科学技術研究所が整備を開始した「日本海溝海底地震津波観測網」の海洋調査および海底機器の製作を受注した。この取り組みとは一体どんなものなのだろうか。その概要とNECが受注した内容を紹介する。

» 2012年03月30日 13時44分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

 NECは2012年3月29日、防災科学技術研究所(以下、防災科研)が整備を開始した「日本海溝海底地震津波観測網」の海洋調査および海底機器の製作を受注したことを発表した。この日本海溝海底地震津波観測網とは、一体どんなものなのだろうか。両者の報道発表資料を基に、その概要とNECが受注した内容を紹介する。

 日本海溝海底地震津波観測網とは、防災科研が敷設を計画する大規模な海底地震・津波観測ネットワークである。千葉県房総沖から北海道東方沖にわたる広範囲な海域と、日本海溝軸の外側海域での、海溝型地震や地震直後の津波の観測を行うものだ。防災科研が整備・運用している高感度地震観測網(Hi-net)などの陸域観測網と併せて解析することで、陸域のみに比べて、沖合に発生した地震の地震動を最大20〜30秒程度早く、津波の発生を20分程度早く、検知することが可能になるとしている。


 完成時には全長5000kmを超える光海底ケーブルと、合計154台の海底観測ユニットが敷設されることになる。各海底観測ユニットからのデータ(地震データと水圧変動データ)は、光海底ケーブルによって24時間リアルタイムで陸上局(端局装置・電源装置・記録装置・GPS受信機などを整備)に伝送され、陸上局のサーバからインターネットを経由して、防災科研のデータセンター、気象庁、大学などの関係機関に配信される。この取り組みにより、地震と津波による被害の軽減や避難行動などの防災対策に貢献するとともに、海洋プレートの沈み込み付近の地震像やプレート構造の解明、地殻活動の調査・研究などにも役立てることができるという。

日本海溝海底地震津波観測網01日本海溝海底地震津波観測網02 今回の整備計画では、海底観測ユニットと海底ケーブルおよび陸上局からなるシステムを、太平洋岸沖〜日本海溝の西側の5つ海域と海溝軸外側(アウターライズ)に順次整備する。5海域のシステムは、おのおの25の観測点を約30km間隔で設置。海溝軸外側は、北海道根室沖から千葉県房総沖までは約50kmごとに観測点を設置(出典:防災科学技術研究所)

 今回、NECが受注したのは、光海底ケーブル敷設ルートの選定と観測点設置予定箇所の構造探査、および2海域分の海底観測ユニットの開発と製造である(平成23年度第3次補正予算にて着手)。NECは、海底ケーブル事業で実績のある光通信技術、長距離における電源供給技術、データ伝送・処理技術を活用することにより、日本海溝海底地震津波観測網に求められる技術仕様への対応を実現するとしている。

海底観測ユニット 海底観測ユニットは、水深8000mまで設置可能な耐圧容器に収納され、センサー部(地震計、水圧計)、伝送部、光増幅部、電源部で構成される。地震計には、加速度型地震計と速度型地震計を搭載し、津波観測用の水圧計は地殻変動や津波の早期検知に活用される。画像は、防災科研の相模湾ケーブル式海底地震観測システムの例である(出典:防災科学技術研究所)

 なお、防災科研によると、平成24年度は「房総沖(千葉県沖)」および「三陸沖北部(青森県沖・北海道日高沖)」の2海域にシステムを整備し、併せて平成25年度以降に整備する観測点装置の開発と製造を進める計画だという。

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