東京・下町の中小企業による商業深海探査シャトルビークル「江戸っ子1号」プロジェクトの共同開発契約の調印式が行われた。2012年度の完成を目標に江戸っ子1号を製作。8000m以上の深海で脊椎魚を発見・3Dハイビジョンでの撮影、海底の泥の採取などを行う計画だ。
2012年1月17日、東京・下町の中小企業による商業深海探査シャトルビークル「江戸っ子1号」プロジェクトの共同開発契約の調印式が行われた。
調印式に参加したのは、同プロジェクトの推進委員会メンバーである杉野ゴム化学工業所、浜野製作所、パール技研、ツクモ電子工業と、支援団体である海洋研究開発機構(JAMSTEC)、芝浦工業大学、東京海洋大学、東京東信用金庫。同プロジェクトは、2009年、下町の中小企業活性化および技術継承を目指し、杉野ゴム化学工業所の社長である杉野行雄氏が発起人となり、立ち上げたもの。同プロジェクトに賛同した企業や教育・研究機関などの協力を得ながら推進し、「江戸っ子1号プロジェクト推進委員会」の正式発足(2011年4月)などを経て、今回の共同開発契約の調印式を迎えた。
2012年度の完成を目標に江戸っ子1号を製作。同年度中に8000m以上の深海(日本海溝を対象)で脊椎魚を発見・3Dハイビジョンでの撮影、海底の泥の採取、探査機の性能確認を行う計画だ。開発予算は約2000万円。
従来の深海探査は、技術的な課題だけでなく、莫大な開発・運用コストが掛かるため、商業的価値を見いだせず、政府機関などが主導となり行われる大規模探査が中心であった。江戸っ子1号は、機能を限定することで低コスト化を実現し、将来的な事業化を目指す。例えば、海洋研究向けの廉価探査機として販売したり、大型艇のデータ搬送などを想定しているという。
前述の通り、江戸っ子1号は8000m以上の深海での探査が主なミッションである。そこで、耐圧性の高いガラス球(直径約44cm)を採用し、探査に必要となる各種装置・測定器(できるだけ民生品を使用しコストを抑える)をカバーし、1つのユニットとする。これが探査機のベースである。
将来的には、これらガラス球をレゴブロックのように自由に組み合わせて、目的に応じた機能を搭載した探査機を簡単に編成(「シャトルビークル」と呼ぶ)することが可能になるという。また、漁船などの小型船舶(支援船)から投下するフリーフォール型(おもりの力で沈む)を採用し、専用の母船を必要とせず、1回の航海で何度も再投入ができるようメンテナンスフリー設計とする。深海探査が完了した後、おもりを切り離して浮上。海上での確実な回収を目的にGPS位置を測定し、イリジウム衛星通信にて探査機の位置を母船に送信するための機器を備える。
委員長 | 杉野ゴム化学工業所 社長 杉野行雄氏 |
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副委員長 | 浜野製作所 社長 浜野慶一氏 |
監事 | パール技研 社長 小嶋大介氏、ツクモ電子工業 社長 桜井敏則氏 |
支援団体 | 海洋研究開発機構、芝浦工業大学、東京海洋大学、東京東信用金庫 |
技術支援 | 沼田光器、他 |
支援教員・研究室 | 戸澤幸一教授、釜池光夫教授、小池義和教授 青木孝史朗准教授、森野博章准教授(芝浦工業大学) 清水悦郎准教授、木船弘康准教授(東京海洋大学) |
表1 「江戸っ子1号」プロジェクト推進委員会 |
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