2012 International CESでソニーが発表した「Crystal LED Display」。約600万個のLEDを敷き詰めた55インチ・フルHDの映像は見る者全てを魅了した。今回は、このCrystal LED Displayの量産化・低コスト化といった“実現性”について考察したい。
毎年恒例となっているInternational CESからハリウッドにかけての取材旅行を経て、連載の間が少し空いてしまった。この間、筆者はさまざまな製品・技術を見聞きしてきたわけだが、“モノづくり”という観点から最も興味を引かれたのがソニーの「Crystal LED Display」だ。
1920×1080画素の55インチ・フルHDとして試作されていたCrystal LED Displayは、画素数分のR(赤)/G(緑)/B(青)各色の微細なLEDを並べ、個々の画素を電気信号で駆動させる自発光ディスプレイだ。もちろん、OLED(Organic Light-Emitting Diode:有機EL)もLEDの一種であるが、Crystal LED Displayの場合は一般的な半導体LEDを大量に、しかも均一に敷き詰めて配線しているのだ。
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LEDは半導体そのものであり、電気信号によって点灯と消灯を繰り返せる。その効果は絶大で、液晶やプラズマ、OLEDなどに比べて以下の特長が見られた。
まず動画解像度が極めて高い。よくある動画解像度確認用の映像スクロールでは、一般に動画解像度が高いとされる短残光の3Dプラズマパネルを圧倒。比べてみるとプラズマがボケて見えるほどだ。
また動画解像度が高いため、動きのある映像では4K2Kの液晶パネルを大きくしのぐ解像感を実現していた。もちろん、動きの少ない場面や写真を表示する際にはこの限りではないが、ひとたび動画となると細部の描写力で圧倒する。
次に階調表現と色再現に優れている。使用しているLEDをどのぐらいの周波数で明滅させているのかは非公開とのことだが、前述したように“応答”という概念がないため、デジタル駆動での階調制御でありながら、十分に滑らかな階調を実現できる。特定の瞬間に画像の縁が虹色に見えるカラーブレイクアップもない。一方ではデジタル駆動ならではの安定した特性で、階調や色相の表現で不安定な部分が見られない。
もちろん、光源がLEDだけにコントラストは素晴らしい。黒は完全に“黒”なのだが、前述したように階調表現が優れているため、コントラストの高さが階調表現の破綻を目立たせることもない。
さらに、これだけの動画解像度、ダイナミックレンジで再現される3D映像は、業務用を含め、あらゆる3Dディスプレイの中で最も優れた体験だった。応答性の高さは、そのまま3D映像のクロストーク低減につながるからである。
細かな点ではあるが、RGBのLEDがほぼ一カ所の点に集まっていることも高画質に寄与しているように思う。通常は1画素を3つのサブピクセルに分割し、それぞれRGB階調を表現するわけだが、Crystal LED Displayでは1つの点として見える。
もちろん、“ショースペシャル”という側面はあるだろうが、これを作ってきたソニーのエンジニアには敬意を表したい。画質の面では、過去に見てきた直視型ディスプレイの中で最も優れていると断言していい。
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