No.30のスライダクランク支点部の滑り対偶を回転対偶に変更したものです。
一般的に、滑り抵抗と比べた場合、転がり抵抗の方が抵抗値が小さく機械効率が良いといえます。同じ力の向きであれば、転がり抵抗の方が有利であることがイメージできるでしょう。
しかしコストアップになる可能性もあるので、使用環境や荷重条件を考慮して、滑り構造をローラー構造に変更できないか検討しましょう! 転がり構造に設計する場合、コストやスペースによってオリジナルでローラーを設計する場合と市販のボールベアリングを使う場合とがあります。ボールベアリングは安価なわりに表面が熱処理されていることから摩耗の心配も少なく、真円度も良好なため転がりローラーとして利用することができます。
滑り対偶を回転対偶にすることでフリクション*1低減につながることが分かりました。
リンク機構の回転支点に、滑り軸受や転がり軸受を採用をしてフリクション低減を目的に使用することも可能です。
*1 フリクション(friction)和訳すると摩擦を意味し、一般的に摩擦抵抗の意味で使用されます。
円弧スライダクランクは、スライダの動作を直線から曲線に変更したものです。機構を考えるときに直線運動しなければいけないという既成概念にはまってしまうと、機構設計は行き詰ってしまいます。
下の事例のように、曲線と直線を組み合わせるとさまざまなアイデアや利用方法が浮かんできます。
図7のアニメーションでは、駆動リンクが反時計回り(CCW)に回転しています。このとき、従動リンクを時計回りに回転させると、どのようになるでしょうか?
図8に示すように、駆動リンクの回転方向によって、スライダのピンが受ける力の向きで機械効率が大きく変わります。
図8の(b)の状態では中間リンクによってピンが円弧穴の壁に向かって荷重を受けるため、アクチュエータの負荷オーバー、機構ロックなどの可能性を排除できません。駆動リンクの回転方向は設計構想書として設計思想を明確にするとともに、電気設計者やソフト設計者とコミュニケーションを密に取り、機械設計者が想定していた回転方向と反対向きに回転させないように留意しなければいけません。
スライド構造を設計するとき、リンクで発生するフリクションと力の向きを考慮して設計しなければ、顕著に機械効率が悪化しアクチュエータの負荷につながったり、動作ロック、スティックスリップなどの動作不良につながったりします。
次回はその他のスライド構造を組み合わせた四節リンク機構の特徴を確認しましょう。(次回に続く)
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