デンソー新社長はソフトウェア出身、「社内に世界でも負けない財産」:製造マネジメントニュース
デンソーは2023年4月10日開催の取締役会において、経営役員の林新之助氏が代表取締役社長COOに就任する異動を決議した。
デンソーは2023年4月10日、同日開催の取締役会において、経営役員の林新之助氏が代表取締役社長COOに就任する異動を決議したと発表した。代表取締役社長CEOの有馬浩二氏は代表取締役会長CEOに就く。経営の執行は林氏が、自動車業界の枠を超えた連携などネットワークづくりは有馬氏が担う。2023年6月に開催予定の定時株主総会と取締役会を経て正式に決定する。
新社長になる林氏は1964年1月生まれ。1986年4月にデンソーに入社し、2015年6月に常務役員に就任。2021年1月から現職の経営役員を務める。
現在は成長領域であるモビリティエレクトロニクス事業グループ長として、クルマの電子化や知能化に貢献する製品開発や事業の成長を推進している。2020年からはチーフソフトウェアオフィサーも務める。クルマ視点でのクロスドメイン開発やグローバルな開発体制の構築、リカレント教育によるソフトウェア人材の育成などにも取り組んできた。
林氏は入社以来、一貫してエレクトロニクスやソフトウェア開発に携わってきた。ディーゼルエンジンのコモンレールシステム(電子制御燃料噴射システム)の開発では、ソフトウェア担当として、アクチュエーターやセンサー、製造、品質のさまざまな部門と協力した。電子プラットフォームの開発では、社内で横ぐしを刺した活動も推進している。
この経験もあって、「デンソーには非常に個性あふれるさまざまなプロがいる。これからクルマがさらに高度化し、人や社会と多様な形でつながっていくには、従来とは次元が違うレベルでさまざまな技術や人が深く関わり合いながら製品やサービスを生み出していく必要がある。そのためには、多様な価値観やスキルを持ったプロたちが個の力を高めることはもちろん、一切妥協せず互いの強みを生かし合い、1つの目標を完遂する力、調和する力が不可欠だ。一人一人の働きがいや生きがいをつなぎ合わせて社会に貢献できる場を提供していきたい。オープンにディスカッションできる風土にする」(林氏)と抱負を語る。
有馬氏は「デンソーはこれまでメカ、エレ、ソフトの三位一体での製品開発を強みとしてきた。それはこれからも変わらないが、クルマがモビリティに進化し、ソフトリッチな社会になっていく中で、ソフトウェアの重要性がさらに高まる。モビリティが社会ともつながる中では社内外、業界内外から共感を得ることも大変重要だ。林氏は新社長として十分に期待に応えることができる人物だ」と評価する。
新社長として取り組む経営課題には、電動化とソフトウェアデファインドビークル(SDV)に対応してポートフォリオの転換を図っていくことを挙げる。生産体制だけでなく、エンジニアのスキルを変えていくことも含まれている。2025年にハードウェアエンジニア1000人をソフトウェアエンジニアにシフトする計画で、現在300〜400人のエンジニアが新たな領域にチャレンジしているという。元の部署と新たに受け入れる部署のそれぞれが、一定期間をかけて新たな知識の習得をサポートする流れができ始めた。エンジニアのモチベーションを第一に、領域を転換していく。
ソフトウェアデファインドビークルについては、「自動車業界全体が非常に苦労している。車載のソフトウェアとIT業界から出てきたソフトウェアをうまくつないでいくこと、品質を担保すること、IT業界のスピードを織り込むことなど、まだ道半ばだ。車載ソフトウェアを手掛けてきた財産がデンソーにはある。グローバルに見ても決して負けるようなものではない」(林氏)と前向きだ。
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