「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

トヨタグループはソフト開発体制を1万8000人に、「幅広い分野の人材が必要」車載ソフトウェア(1/2 ページ)

トヨタ自動車は2021年8月25日、オンラインで説明会を開き、ソフトウェアやコネクテッド技術の開発方針を発表した。

» 2021年08月26日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車は2021年8月25日、オンラインで説明会を開き、ソフトウェアやコネクテッド技術の開発方針を発表した。

 まずは2021年秋に発売するレクサスブランド「NX」の新型車に、4年ぶりに全面改良したマルチメディアシステムとコネクテッドサービスを採用する。マルチメディア以外にメーターなども無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)に対応する他、Webサイトの閲覧や音楽配信、動画視聴などができるブラウザ機能を持たせる。

 国や地域によって道路事情やクルマの使われ方が異なることを踏まえ、新型NXでは地域ごとの開発に取り組んだ。トヨタ自動車でChief Product Integration Officerを務める山本圭司氏は「グローバルワンパッケージで地域に展開するのは限界がある」とコメント。トヨタグループ全体で1万8000人のソフトウェア開発体制とする方針を示した。このうち、トヨタと子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスやトヨタコネクティッドでは3000人の開発体制とする。

地域ごとにソフトウェアやコネクテッド技術を開発する(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 コネクテッド技術はカーボンニュートラルに向けた排出削減でも活用する。HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)が、走る場所や時間帯に応じてリアルタイムでモーターのみで走るEV走行に切り替えられるようにする「ジオフェンス技術」の実用化を進める。ゼロエミッション車以外の立ち入り制限区域を設けるなどの規制に対応できるHEVやPHEVを増やす。ジオフェンス技術の開発でも、クルマの使い方の特徴を地域ごとに理解することが重要になるという。

 競合の自動車メーカーでは、Volkswagen(VW)が2025年までにグループ全体でソフトウェアエンジニアを1万人以上に増やす計画で、トヨタグループの1万8000人は自動車業界としてはかなり大きな人員規模であることが分かる。

 山本氏は「人材の多様性をどう整えるかがポイントになる。ソフトウェアエンジニアと一言で言っても、アーキテクト、機能開発やテストのプログラマー、プロジェクトマネジメント、AI(人工知能)の開発に不可欠なデータサイエンティストまで、幅広い人材を必要としている。クルマのOS(基本ソフト)、ADAS(先進運転支援システム)、メーターやインフォテインメントシステムのグラフィックデザイン、シミュレーションなど、さまざまな領域の開発を強化するためにも、採用をグローバルで広げる」と語る。

「ソフトウェアエンジニアの立場の弱さ」も変えていく

 ハードウェア開発がソフトウェアよりも優位に立った開発体制も改める。「これまでは2〜4年の足の長い開発で、ハードウェアが完成しなければソフトウェアの開発ができなかった。最後までソフトウェアエンジニアにすり合わせで汗をかかせる流れになっており、『ソフトウェアエンジニアは立場が弱い』という声が出る要因になっていた。これからはその在り方を変えて、ハードウェアが完成する前にソフトウェアを開発できるようにする」と山本氏は説明した。

Areneによって、ソフトウェア開発の在り方を大きく変える(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車
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