NTTは、サブテラヘルツ帯を用いた長距離無線伝送実験を実施し、100mの伝送距離で2Tbpsのデータ転送に成功した。アナログ信号処理を軸とする独自技術で低遅延化や省電力化を図る。
NTTは2026年9月14日、サブテラヘルツ帯(100G〜300GHz帯)において、100mの伝送距離で2Tbpsの無線伝送の実証に成功したと発表した。電波のOAM(軌道角運動量)を用いて無線空間多重伝送を実現する「OAM-MIMO多重伝送方式」と長距離化技術群を確立し、世界最高速の通信速度を達成した。
今回の実験では、136.0G〜148.5GHzおよび151.5G〜164.0GHzの周波数帯を用い、最大22空間多重を構成した。8つのOAMモード(0、±1、±2、±3、−4)多重と各モード内での最大2多重適応制御、水平および垂直の偏波多重を組み合わせている。
従来のMIMO(空間多重技術)処理が膨大なデジタル演算を要するのに対し、空間多重処理の大半をアナログ導波回路で実行するハイブリッド構成を採り入れた。デジタル信号処理は各OAMモード内での空間多重処理にのみ限定的に適用。8素子2リングのUCA(円形アレーアンテナ)構成では、デジタル演算負荷を数百分の一に削減し、低遅延性と省電力性を確保した。
100mの長距離化を可能にするため、3つの要素技術を開発した。小型の「Multi-UCA型Butler matrix導波回路技術」は、従来比で回路規模を2倍に拡張しつつサイズを約40%削減し、回路損失は平均2.2dB以下の低損失を達成。回路一体型アンテナを1次放射源とし、回転対称構造を維持して自己遮蔽を回避する「イメージングリフレクタ技術」によりアンテナ拡大像を形成した。さらに、対向するアンテナの軸ずれによる干渉を防ぐため、SINR(信号対干渉雑音電力比)のピークを探索する「軸ずれ補正技術」のアルゴリズムを構築した。
近年、AI(人工知能)技術の普及や次世代情報通信インフラの高度化に伴い、データ転送容量は増加の一途をたどっている。800G/1.6T級の次世代光通信規格への移行が進む中、物理的な配線工事を必要としない大容量無線技術の要求が高まっていた。
同技術は、AIデータセンター内の分散コンピューティング環境、6G基地局のバックホール、災害時の臨時中継回線への適用を見込む。今後は10Tbps級の伝送や多地点同時接続への拡張を目指す。
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