現代では製品の複雑さが指数関数的な勢いで増大している。データ速度や帯域幅、さらには設計者が扱うべき仕様の数に至るまで、あらゆる要素が急激に増加している。
キーサイト・テクノロジー米国本社 DES Central Strategy Group Senior DirectorのChris Mueth(クリス・ミュース)氏は「例えば、携帯電話のPA(パワーアンプ)モジュールを例に挙げると、約15年前の2G携帯電話では仕様の数が100程度だったが、現在の5G携帯電話では仕様の数が数千を超えている。しかも、1つの仕様が他の複数の仕様に影響を及ぼすといった相互依存関係も存在している」と語る。
このことを踏まえ、複数の異なる物理現象や物理モデルが同時に影響し合う複雑な挙動を、コンピュータ上で一体として解析/シミュレーションする「Multiphysics(マルチフィジックス)解析」が重要となっている。特にエレクトロニクス業界ではマルチフィジックス解析における重要な物理領域として「電磁気学/回路」「熱」「構造力学」「計算流体学」「光学」の5つが存在しており、中でも「電磁気学/回路」「熱」「構造力学」の3領域は密接に関係している。
ミュース氏は「当社は約2カ月前に『Keysight Multiphysics』という製品をリリースした。これは、マルチフィジックスに関わる複雑なエンジニアリング課題に対処するためのものであり、特にエンジニアが電子機器の設計で直面する困難な問題に焦点を当てている。こうした難易度の高い領域に注力することで、現在エンジニアを悩ませているワークフローを効率化し、従来欠けていた機能を提供できるようになった」と述べる。
キーサイト・テクノロジーは同製品の第1弾として、構造解析に対応し、落下や衝撃、振動に対応するコンプライアンスシミュレーション機能を提供している。従来は測定器の開発段階で、実機を治具に取り付けて物理的に落とす物理テストを実施していたが、テストで不合格となると再設計が必要となり、コストや試作時間だけでなく金型工具の再作成など甚大な損失が発生していた。
この課題をKeysight Multiphysicsの機能を使うことで解消できる。CAEソルバーを用いて、筐体内部のメカ部品/電子部品のひずみや破壊を仮想空間で高精度に物理シミュレーションし、手戻りと試作コストを劇的に抑えることに成功している。
また、システムが複雑化するにつれて、エンジニアは自身の専門領域を超えた対応が必要となっている。ミュース氏は「専門外のツールを使いこなすための訓練を受けていないエンジニアが、どのようにしてマルチドメインエンジニアリングを行うかという課題に対し、私たちは解決策となる製品を投入している。これにより、高度な解析の専門家でなくても、ある程度のマルチドメインエンジニアリングを可能にし、設計プロセスをより早い段階へ移行させることができる」と強調する。
さらに、企業内で異なるツール間でデータが連携しない問題を解決するために、オープンなMCPサーバアプローチを採用してシミュレーターとモデルが相互通信できる環境を整え、顧客独自のワークフロー構築を支援している。
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