キーサイトが語るAI時代に必要な「次世代の半導体設計」とは何か組み込み開発ニュース(1/3 ページ)

キーサイト・テクノロジーは報道陣向けのブリーフィングを開催し、AI時代における次世代半導体設計をテーマとして、AIに対する考え方や同社の取り組みについて説明した。

» 2026年09月15日 06時15分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 キーサイト・テクノロジーは2026年8月26日、東京都内で報道陣向けのブリーフィングを開催し、AI(人工知能)時代における次世代半導体設計をテーマとして、AIに対する考え方や同社の取り組みについて説明した。

キーサイト・テクノロジー米国本社のヤン・ゾウ氏(左)とクリス・ミュース氏(右)

半導体設計にAIが必要な理由

 現代の半導体設計には幾つかの課題があるが、大別すると「技術面」と「人材面」の2つに分けられるという。キーサイト・テクノロジー米国本社 Global EDA Business Development and Operations Senior DirectorのYang Zou(ヤン・ゾウ)氏は「技術面の課題は、さらに『複雑性』と『ワークフロー』という側面に分けられる。技術的な観点から見ると、最新技術においてはシグナルインテグリティやパワーインテグリティなど、考慮すべき設計変数が非常に多く存在している。これらに対処するには多大な時間と専門知識を要するが、AIを活用することで、かつては不可能だったことが可能になる」と強調する。

 特にRF/マイクロ波設計の分野では、若手からシニアに至るまで、エンジニアが設計作業に多大な時間を費やしており、業界全体で経験豊富なRF/マイクロ波エンジニアが不足しているという課題が存在している。この課題に対し機械学習を活用すれば、エンジニアが持つ経験やノウハウを早期に蓄積し、組織全体で容易に共有することが可能になる。

 ゾウ氏は「AIはさまざまな用途で活用されているが、RF/マイクロ波設計や高速デジタル設計の分野ではあまり導入されてこなかった。その主な理由は、かつてはLLM(大規模言語モデル)が十分に成熟しておらず、学習に必要なデータも限られていたからだ。しかし、われわれのソリューションが登場したことで、物理ベースのモデルとデータ駆動型ソリューションを組み合わせた検証が可能になり、エンジニアが信頼して利用できる精度の高い結果を得られるようになった」と語る。

 さらに、AIによって人材の育成スピードを向上させることができるようになっている。従来は設計エンジニアが経験を積み、さまざまな製品開発を経て一人前になるまでには長い時間を要していた。しかし現在では、設計自動化プロセスやデータ収集を通じてIP(知的財産)の活用や連携が進んでおり、経験やノウハウを効率的に蓄積/活用できるようになった。

「AIや機械学習の導入プロセスを通じて経験を積み、各グループから学び合うことで、組織は『学習する組織』へと進化し、教師なし学習などの技術も効果的に活用されるようになる。これこそが、AIがわれわれの業界にもたらす貢献である」(ゾウ氏)

AIが可能にすること[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー

 また、キーサイト・テクノロジーはAIの重要な側面として「オープンシステム」である点を挙げている。ゾウ氏は「MCP(Model Context Protocol)サーバが成熟し、業界に普及するにつれて、顧客は独自のLLMやAIエージェントを選択/構築し、好みのツールを自由に組み合わせて利用できるようになる」と述べる。

 ワークフローの観点では、かつては人間がGUIツールを使用して、マウスやキーボードを操作して開発を行っていた。現在では、生産性向上のためにPythonによる自動化スクリプトが活用されており、LLMやエンジニア自身の技術力を駆使してスクリプトが作成されている。この部分に対し、今後は自律型AIエージェントがPythonスクリプトを生成し、自動化の実行や改善を担うようになる。

 さらに、ユーザーエクスペリエンスの面では、従来はGUIベースの手作業が中心だったが、自然言語の利用が普及しつつある。LLMが情報を解釈/翻訳し、ツールを動かす役割を果たし、エンジニアは特定のツールの専門家になる必要はなく、自然言語や母国語を使ってツールを操作できるようになる。「将来的には、人間の監督下でAIが自律的に設計/開発作業を完遂する形になる」(ゾウ氏)。

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