キーサイト・テクノロジーが、次世代移動体通信規格である「6G」の特徴や今後のロードマップについて説明。6Gでは4つの新技術が採用されることになるという。
キーサイト・テクノロジーは2023年1月13日、東京都内で会見を開き、次世代移動体通信規格である「6G」の特徴や、今後どのようなロードマップで開発が進められるかについて説明した。規格策定団体の3GPPは、既に調査研究やテストベッドを開発しており、2025年から規格の策定作業がスタートする計画だが、この6Gのショーケースとして2025年に大阪で開催される日本国際博覧会(大阪万博)や2028年のロサンゼルスオリンピックが想定されているという。
会見に登壇したのは、同社で6Gプログラムマネージャーを務めるロジャー・ニコラス(Roger Nichols)氏である。前身となるHP、アジレント・テクノロジーの時代から、アナログ携帯電話の1Gから2G、3G、4G、5G、そして現在の6Gに関するプログラムやプロジェクトに携わってきた人物だ。ニコラス氏は「2Gは音声通信、3Gはデータ通信、4Gはモバイルインターネット、そして5Gは人と人の間だけではないさまざまな産業に広がる通信を実現した。6Gは、フィジカルとデジタル、人をつなぐようになるだろう」と語る。その特徴として挙げたのが「available(利用できる)」「reliable(信頼できる)」「faster(より高速)」「programmable(プログラムできる)」という言葉だ。
これらに加えて、キーサイト・テクノロジーとして6Gの開発を支援する上で重視する視点として「sustainability(持続可能性)」を挙げた。「通信業者にとって最も大きなコストになるのがエネルギー消費だ。当社のさまざまな計測器によって、エネルギー消費を抑えられるようにする」(ニコラス氏)という。
3GPPでは、移動体通信規格を10年スパンで開発してきた。6Gの開発や規格化は2020〜2030年の10年間で進められ、2029〜2030年に6Gの商用サービスが始まる見込みだ。6Gの調査研究は、2020年に5Gの商用サービスがスタートした以前から始まっており、現在はテストベッドや要素技術のデモンストレーションが行われている段階だ。その上で、6Gの規格策定作業は2025年にスタートし、Release 20が初期バージョンとなり、続くRelease 21が実装可能な最初の規格になるという。ニコラス氏は「2025年開催の大阪万博で6Gのデモンストレーションを行いたいという依頼が日本政府からあった。続いて、5Gにおける2018年の平昌冬季オリンピックがそうであったように、6Gでは2028年のロサンゼルスオリンピックが大規模なショーケースになるだろう」と説明する。
6Gでは「新しい周波数の導入」「AI(人工知能)とML(機械学習)を活用したネットワーク」「デジタルツイン」「新たなネットワークアーキテクチャ」という4つの新技術が導入される方向にある。
「新しい周波数の導入」で検討されているのがサブTHz帯の追加である。5Gでは、国内でも利用可能な28GHz帯をはじめ、最高で71GHzまでの周波数の利用に向けた規格化が行われている。6Gでは、これをさらに拡張し、100G〜300GHz(0.1T〜0.3THz)のサブTHz帯を追加することになりそうだ。利用可能な周波数帯の広さは、5Gのミリ波導入で一気に拡大したが、6GのサブTHz帯導入はそれをさらに上回ることになる。これに加えて、フルデュプレックス(全二重通信)やスマートスペクトラムシェアリング、次世代MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)などの周波数有効利用技術の導入も進む。
6Gで大きなインパクトを生み出しそうなのが「AIとMLを活用したネットワーク」である。ニコラス氏は「これまでトランスミッタやレシーバーなどを組み合わせたネットワークの設計は人が行っていた。このため、1つの設計を全てのネットワークに適用していたが、これだと実際にはさまざまに変わる周辺環境に最適化できているとはいえなかった。AIとMLを活用することで、状況、性能、周波数などさまざまな要素に合わせて最適なネットワークを設計できるようになり、リアルタイムな組み替えさえも可能になる」と強調する。
またAIは、無線ネットワークの設計だけでなく、レイテンシ、容量、エネルギー消費などさまざまな目的に活用できる。「国レベル、街レベル、セル単位などさまざまなスケールごとで最適な条件は異なる。あまりにもシステムが複雑になり過ぎたが故に人手での最適化はもう無理だ。AIとMLが必須になる」(ニコラス氏)。
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