AIとMLの活用が波及するのが「デジタルツイン」だ。データを基に構築した仮想=サイバーの世界と、現実=フィジカルの世界をシームレスに連携することで、現実世界で起こり得ることを仮想世界上のシミュレーションで予測しあらかじめ対策を施しておくなど、デジタルツインには大きなメリットがある。5Gを超える通信が可能な6Gは、仮想世界の基になるデータを、現実世界からより高い粒度で取得できるようになるが、取得したデータをリアルタイムに仮想世界に反映し最適化する上でAIとMLが重要な役割を果たすことになる。ニコラス氏は「6Gを使って仮想世界を構築する一方で、仮想世界の中で6Gを使って現実世界に反映するというサイクルも生まれる」と述べる。
「新たなネットワークアーキテクチャ」では、既にStarlinkなどの事例があるNTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)の導入が進みそうだ。3GPPでは、高度150m以下の低空で運用するドローン(UAV)向けと、高度20kmなどの高高度で利用するHAPS(High Altitude Platform Station:高高度基盤ステーション)、高度600km以上の低軌道衛星を用いる衛星通信向けで分けて規格化を進めている。「地中や水中などでの通信についても検討が進んでいる」(ニコラス氏)という。
また、5Gで導入が始まった基地局システムの仮想化もさらに進化する。O-RANアライアンスの活動などにより、フロントホール、ミッドホール、バックホールを結ぶ各インタフェースがオープン化され、柔軟なシステム構成が可能になっている。中でも、RIC(Radio Intelligent Controller)はAIを組み込むことで、システムを構成する各ノードの運用がインテリジェント化を実現している。ニコラス氏は「使い方は分からないが、6GではRIC以外の各システム構成要素にもAIが組み込まれることになるのは確実だ」と語る。
1Gの時代から移動体通信規格の策定や導入の動きを見てきたニコラス氏は「6Gは既に目に見える形で動きが出ており、5Gよりも早く、これまでにない協力体制だ。特に各国政府の支援がしっかりしている。例えばインドなどは、5Gの導入がまだ終わっていないにもかかわらず、6Gについてはかなりアグレッシブだ」と説明する。
また、日本が6Gの規格化や実装などで果たす役割に対する期待についても言及した。「日本は移動体通信に関わる研究開発に積極的なだけでなく、島国の中でハイテク、農業、鉱山、漁業などのさまざまな産業が混在するという地理的条件からも、特に6Gで導入されるNTNテストケースとして重要になってくるだろう。当社は、グローバルで6Gに関わるさまざまな活動を支援しているが、日本発で光と無線の統合を目指すIOWN Global Forumは非常に優れた試みをしていると考えており、積極的に支援していきたい。どんなに大きな企業であっても6Gは単独で開発できるものではない。協力が必要だ」(ニコラス氏)としている。
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