エリクソン・ジャパンが2022年11月に発表した「エリクソン・モビリティレポート」について説明。日本の5Gネットワークの基地局密度やスループットが、韓国や台湾、中国など北東アジアの近隣諸国と比べて低いレベルにとどまっていることを指摘した。
エリクソン・ジャパンは2022年12月22日、オンラインで会見を開き、同年11月に発表した「エリクソン・モビリティレポート」について説明した。同レポートによれば、2022年末時点における全世界の携帯電話(モバイル)加入契約数84億人のうち5G加入者数は10億人を超え、2028年末までに50億人に達するという。また、LTEの加入者数は2022年第4四半期にピークとなる52億人となるものの、今後は5Gとの置き換えが進んで2028年末には36億人に減少する見込みだ。
5G加入者数の立ち上がりはLTEと比べて早く2018年を起点とすると4年で10億人を達成する。これは2009年を起点に10億人まで6年かかったLTEよりも2年早いことになる。
またセルラーIoT(モノのインターネット)の接続数は2022年が27億となっており、2028年にはほぼ倍増の55億になる見込みだ。LTE-MやNB-IoTを用いるマッシブIoTが着実に接続数を伸ばす一方で、通常のLTEや5G回線を用いたブロードバンドIoTの市場も拡大する。2028年時点のセルラーIoT全体に対するブロードバンドIoTの比率は60%になるという。
今回の発表で気になるデータとして挙げられたのが、日本の5Gネットワークの基地局密度やスループットが韓国や台湾、中国など北東アジアの近隣諸国と比べて低いレベルにとどまっていることだ。
2022年前半時点での日本の5G基地局の数は14.6万で、LTE基地局の75.5万に対して19%にとどまっている。また、LTEからの流用ではない真の5G帯域である6GHz以下を用いるサブ6基地局は6.9万とさらに少ない。Opensignalの調査によれば、東京都内の5G捕捉率は平均で7.3%にとどまり、優先的にエリア対応されている山手線内でも17%強にすぎないという結果が出ている。
日本の5Gスループット(下り速度/中間値)を韓国や台湾、中国と比較した場合でも、韓国の536.2Mbps、台湾の309.5Mbps、中国の296.3Mbpsよりもはるかに低い165.1Mbpsとなってる。サブ6基地局の面積当たりの密度や人口当たりの密度では、韓国や台湾に大きく水をあけられており、国土がはるかに広く人口も多い中国とほぼ同水準となっている。さらには、5Gの高速通信を実現する上で重視されるマッシブMIMOを採用したサブ6基地局の比率を見ると、日本が10%程度にとどまるの対し、中国と台湾が90%以上、韓国も70%以上を確保している。
このサブ6基地局におけるマッシブMIMO採用は、北米市場での5G競争で優位に立つT-Mobileの原動力にもなっている。5Gネットワークを拡充する基地局への投資において、全世界市場の70〜80%がサブ6/マッシブMIMOに集中している状況だ。
エリクソン・ジャパン CTOの藤岡雅宣氏は「これは日本の市場にとって大きな課題だ。通信キャリアの設備投資抑制が主因だが、コロナ禍で在宅率が高まってモバイルトラフィックが増えていないという背景もある」と説明する。また、マッシブMIMOに対応したアンテナが大型であり、既存のLTE基地局との併設が難しいという理由もあるようだ。この他「台風や地震など災害対応の観点での制約もあるのではないか」(藤岡氏)と指摘した。
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