エリクソン・ジャパンは、東京都内で「エリクソン・フォーラム2018」を開催し、次世代携帯電話通信技術である5GやIoT(モノのインターネット)の技術動向を紹介。併せて、エリクソンの戦略について説明した。
エリクソン・ジャパンは2018年11月8日、東京都内で「エリクソン・フォーラム2018」を開催し、次世代携帯電話通信技術である5GやIoT(モノのインターネット)の技術動向を紹介。併せて、エリクソンの戦略について説明した。
エリクソン・ジャパン 社長の野崎哲氏は冒頭で「5Gは既に現実」と語り、ベライゾン(Verizon)が2018年10月に米国内で商用サービスを開始したことを取り上げた。米国では、ベライゾンに続きAT&Tが2018年12月に、そしてスプリント(Sprint)とTモバイル(T-Mobile)が2019年上期に5Gの商用サービスを始める計画だ。なお、ベライゾンとAT&Tは宅内ブロードバンド通信のラストワンマイルとなる固定無線アクセス向けで5G通信の利用を始めるが、スプリントとTモバイルはスマートフォンなどのモバイルブロードバンドでの5G通信に焦点を当てている。
また2019年に入ると、韓国や欧州、オセアニア、インド、中東などでも5Gサービスが始まる。日本では、2019年9月から開催されるラグビーワールドカップに合わせてパイロットサービスを開始する予定であり、2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックから本格化する見通しだ。5Gについて先進的な取り組みを進めている中国については「最近はトーンダウンしており、商用サービス開始は2020年となる見込み。ただし、2019年後半に予定している大規模トライアルは基地局を10万基設置して行う予定で、トライアルといっても日本全体と変わらないほどの規模になる」(野崎氏)という。
5Gは通信に使用する周波数帯が幅広いことも特徴になっている。これは、現行のLTEで使用している数GHzよりもはるかに高い20GHz以上のミリ波帯は加わったためだ。例えば、ベライゾンやAT&Tの固定無線アクセスで用いている5Gではミリ波帯を用いている。一方、モバイルブロードバンドでの5G適用をうたうスプリントは2.5GHz帯、Tモバイルは600MHz帯でサービスを始めることになる。
野崎氏が周波数帯に加えて強調したのが帯域幅だ。同氏は「日本は1事業者当たりの帯域幅の割り当てが150MHzとかなり多い。同レベルにあるのはオーストリアくらいで、一般的には100MHz程度だ。日本政府は、5Gを地方創生の手段に位置付けていることとも関係してくる」と述べる。
また5G通信を行うためのデバイスとしては、2018年第3四半期まではFPGAやASICレベルの段階だが、同年末〜2019年初頭にかけてモバイルルーターが登場する。そしてスプリントとTモバイルのサービス開始時期に合わせて、5G対応のスマートフォンの市場投入が始まる見込みだ。現在、5G対応スマートフォンの投入を表明しているモトローラ(Motorola)、LG電子(LG Electronics)、オッポ(OPPO)、シャオミ(Xiaomi)はクアルコム(Qualcomm)のベースバンドIC「X50」を採用しているが、インテル(Intel)やサムスン電子(Samsung Electronics)、ハイシリコン(HiSilicon)も開発を進めている。「エリクソンはこれらの企業と接続試験を進めており、いつ市場投入されてもいい状況になっている」(野崎氏)とする。
現在、世界全体の携帯電話通信データ量は加速度的に増加しており、2016年の月間65億PBから2017年は月間110億PBとなった。そして2023年には2017年の8倍まで増加すると予想されている。5Gは、2023年のデータ通信量のうち20%を担う見込みで「これは2017年の全体のデータ通信量よりも多い」(野崎氏)。また、データ通信量の増加の原因になるのがビデオで、2017年が全体の50%なのに対し、2023年は75%まで増えるという。
そして、ビデオを中心としたモバイルブロードバンドの拡大が需要をけん引する5Gは、その後進化したIoT(モノのインターネット)の新しいユースケースに展開を広げていくことになる。野崎氏は「産業界は5G活用に前向きで、日本では、自動化やロボット、AI(人工知能)などを生かした地方創生において全国規模の5Gが重要な役割を果たすだろう」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.