高屈折率樹脂と「SmartNIL」プロセス、AR光学デバイスの量産に有効材料技術

NTTアドバンステクノロジとEV Groupは、高屈折率樹脂「NH700シリーズ」と「SmartNIL」プロセスの組み合わせが、AR光学デバイスの量産に有効であることを実証した。

» 2026年09月11日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)とナノインプリントリソグラフィ(NIL)装置のリーディングメーカーであるEV Group(EVG)は2026年9月8日、共同で、NTT-ATが供給するUV硬化型高屈折率樹脂(高屈折率樹脂)とEVGの「SmartNIL」プロセスの適合性を検証し、AR光学デバイス向け光導波路の製造可能性について評価したと発表した。

AR光学デバイスに求められる高い耐環境性を明らかに

 近年、ARグラスをはじめとする次世代光学デバイス市場では、軽量化と高画質化の両立が求められている。その実現には、光を精密に制御するサブミクロンオーダーの回折格子やメタ光学素子の量産技術が必要とされている。

 この量産技術を実現するためには、高い光学性能を維持しながら低コストで製造できなければならない他、高精度なナノインプリント装置と、それに適合する高屈折率材料の確保が重要となる。

 そこで今回の共同評価では、NTT-ATが開発した高屈折率樹脂「NH700シリーズ」の1つである「NH762」を用いて、EVGの「SmartNIL」プロセスおよびモールド用の材料「EVG NIL UV/AS5」との適合性を検証した。その結果、AR向け光導波路に求められる高いパターン忠実性と量産適性を確かめた。また、NH762を活用した転写サンプルに対して耐環境性評価を実施し、試験前後における形状変化が小さいことを確認した。

高屈折率樹脂「NH700シリーズ」の仕様 高屈折率樹脂「NH700シリーズ」の仕様[クリックで拡大] 出所:NTT-AT

 今回の評価では、350nmライン&スペース構造の高精度な転写に加え、45度傾斜型回折格子や最小65nmのメタ光学素子についても欠陥や変形のない良好な転写性を確かめた。また、EVG NIL UV/AS5を用いた25回連続転写試験では、転写回数に対する転写パターンの高さ変化が約2.2%に抑えられ、量産適用に向けて重要な寸法安定性と離型性をチェックした。

NH762のナノインプリントパターンのSEM画像。45度傾斜型回折格子の断面画像(左)とメタ光学素子の俯瞰画像(右)。メタ光学素子はテクセンドフォトマスクのマスターモールドを用いて評価 NH762のナノインプリントパターンのSEM画像。45度傾斜型回折格子の断面画像(左)とメタ光学素子の俯瞰画像(右)。メタ光学素子はテクセンドフォトマスクのマスターモールドを用いて評価[クリックで拡大] 出所:NTT-AT

 さらに、高温高湿試験および光照射試験後も転写パターンの構造の変化は小さく、AR光学デバイスに求められる高い耐環境性を明らかにした。これらの結果から、NH762は高屈折率、高透明性、耐環境性を兼ね備えたAR向け光導波路材料として高い実用性を有することを実証した。

NH762の25回連続転写試験における転写パターンの高さ変化 NH762の25回連続転写試験における転写パターンの高さ変化[クリックで拡大] 出所:NTT-AT

 なお、AR光学デバイスの開発では、材料評価、信頼性試験、量産適合性の検証に長い期間を要するケースが多い。しかし、今回の成果により、ナノインプリント用の材料と量産プロセスをあらかじめ検証した状態で提供可能だと分かった。そのため、AR光学デバイスメーカーは、材料選定や初期プロセス開発に要する期間を短縮し、量産プロセスへの移行をより円滑に進めることが期待できる。

 今後、両社は共同で評価したNH762に加え、その他のNH700シリーズについても同ナノインプリント装置を用いた転写性の評価を進める予定だ。AR光学デバイスの他、次世代メタ光学素子、LiDAR、センシングデバイスなどへの応用も視野に入れ、開発および評価を推進する。

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