透明発電ガラスの発電性能向上に成功、新バージョンのサンプル提供を開始材料技術

NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は、inQsとの共同研究開発で、透明発電ガラス(SQPVガラス)の発電性能と品質を向上させることに成功した。

» 2024年10月01日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は2024年9月30日、inQsとともに、透明光発電素子(Solar Quartz Photovoltaic、SQPV)の技術を活用した透明発電ガラス(SQPVガラス)の研究開発を進め、その発電性能と品質を向上させることに成功したと発表した。

 この研究成果を基に製造したSQPVガラスの新バージョン(V2版)の評価用サンプル(ES品)を同年11月1日から提供開始する。V2版のESは利用場所として屋内が想定されている。

SQPVガラス V2版の特徴

 SQPVガラス V2版は、30cm角のガラス1枚が1セルである従来のSQPVガラスをマルチセル化(11×6セル)した他、材料も改良することで30cm角サイズ全体での出力値を向上させた。同製品の発電効率は1%で、発電性能は50mW以上(放射照度100W/m2)、可視光透過率は56%以上となっている。

 今後、両社はV2版の安定供給に向けた体制を整えるとともに、屋外利用に向けて性能と品質の向上や遮熱/断熱性能の評価に取り組み、SQPVガラスの適用領域拡大を推進していく。

SQPVガラス V2版の外観 SQPVガラス V2版の外観[クリックで拡大] 出所:NTT-AT

SQPVガラス V2版開発の背景

 NTTグループは、光に関する技術を活用した高速大容量通信や膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク/情報処理基盤の構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想」を掲げている。

 同構想の一環として、地球温暖化対策、再生可能エネルギーのさらなる活用、限られたエネルギー資源の有効利用などを目指した「スマートエネルギー事業」の取り組みも推進している。

 こうしたNTTグループの取り組みの中で、NTT-ATは、再生可能エネルギーによる循環型社会の実現に向けた取り組みの1つとして、2020年2月にinQsとSQPVガラスに関する国内独占販売契約を締結し、顧客へのSQPVガラスの販売/導入を推進してきた。

 2020年2月にinQsのSQPVガラスを国内発売して以降、NTT-ATは発電した電力で可動するシステムやSQPVガラス、枠で構成されるセットを窓ガラスの内窓として設置する「窓枠タイプ」の実証試験および、可動型衝立(ついたて)としてオフィスフロアに設置する「可動型衝立タイプ」の納品を行っている。

「窓枠タイプ」 「窓枠タイプ」[クリックで拡大] 出所:NTT-AT
「可動型衝立タイプ」 「可動型衝立タイプ」[クリックで拡大] 出所:NTT-AT

 併せて、両社は、SQPVガラスの性能向上および品質改善に関する共同研究を進めており、V2版の開発成功に至った。

SQPVガラスとは?

 SQPVガラスは、二酸化ケイ素をナノレベルに加工した透明光発電素子であるSQPVの技術を活用した透明発電ガラスだ。見た目は透明ガラスでありながら発電できる。遮熱効果により空調などのエネルギー消費量も減らせる。また、北面や室内光など弱い光でも発電できるため、電気が必要な場所での発電にも対応する。

⇒その他の「材料技術」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.