日本電気硝子は、次世代半導体パッケージへの利用が期待されるガラスセラミックスコア基板「GCコア」を開発した。
日本電気硝子は2024年6月5日、次世代半導体パッケージへの利用が期待されるガラスセラミックスコア基板※1「GCコア」を開発したと発表した。
※1 コア基板:半導体チップを載せる土台となる基板材料。
一般にコア基板には、表裏に形成された微細な金属配線を電気的に接続するため、微細貫通穴(ビア)を形成する必要がある。しかし、一般的なガラス基板の場合、CO2レーザーにより穴を開けると、一定の割合でクラック(割れ目)が入り、基板の破損につながる恐れがある。通常はクラックを避けるためレーザー改質とエッチングを用いて穴加工するが、この方法は技術的難易度が高く加工に時間がかかるだけでなく、設備投資が必要になる。
これらの課題をGCコアは解決している。GCコアは、ガラスに加えてセラミックスの特性※2を有しており、一般的な樹脂製のプリント基板やコア基板の加工に用いられているCO2レーザー加工機を用いて、高速でクラックレスの穴開け加工が行えるため経済的であり、量産コストの低減が期待される。
※2 セラミックスの特性:セラミックスは結晶構造を持ち、結晶内の原子やイオンが強力に結びついている。そのため、セラミックスは外部の力によって変形しにくく、クラックが入りにくい特性がある。
利用されているガラスセラミックス材には、同社が独自に開発した低温同時焼成セラミックス(LTCC材料)を使用することで、誘電率/誘電正接※3が低く、信号の遅延や誘電損失を少なくしている。
※3 誘電正接:誘電体が分極するときのエネルギーの指標。誘電正接が小さいほど、電磁波のエネルギーが熱に変換されにくくなり信号の減衰が抑制される。
また、GCコアは、ガラス基板と比べて強度が高いため、基板を薄くすることができ、半導体の薄型化に貢献する。加えて、割れにくいため半導体パッケージ生産プロセスのハンドリング性を高められる。同基板は、ガラスとセラミックスの組成や配合比を変えることで、ニーズに合わせた特性を実現。誘電特性に優れた低誘電率タイプ以外にも、樹脂基板の熱膨張に合わせた高膨張タイプ、強度に優れた高強度タイプなど幅広い用途に応じる基板の開発を可能にする。
既に同社は300mm角のGCコアの開発に成功しており、2024年内に515×510mmのGCコアを開発することを目指している。
近年、データセンターの需要増大や生成AI(人工知能)などの普及によるデータ通信量の増加に伴い、これらを支えるインフラなどに使われる半導体にはさらなる高性能化や低消費電力化が求められている。
半導体の性能向上には、回路の微細化やチップレット化※4、基板の大型化といった対応が不可欠だ。しかし、従来の樹脂製のコア基板では微細化が困難であるとともに、複数の半導体チップを搭載した場合や基板を大きくした場合に基板が変形するという剛性上の課題がある。
※4チップレット化:機能の異なる複数の半導体チップを1つの基板上に高密度に実装し、処理速度を向上させる半導体パッケージの先端技術。
このため、樹脂製のコア基板に替わる次世代の材料として、電気的特性、剛性、平たん性などに優れたガラスを用いたコア基板の開発が進められている。今回、同社が開発したGCコアは、ガラス粉末とセラミックス粉末の複合材を用いたコア基板で、ガラスを用いたコア基板の特性に加え、ビアの加工が容易という特長を持つ。
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