2つのばね定数が出ましたが、1つ目はホリゾンタル荷重による変位、2つ目はヨーイングモーメントによる回転角を表すため、そのままでは大小を比較できません。
図10に示すように、1つのLMブロックの上に板が付いているとして、板に荷重をかけ、その変位を求めてみましょう。図10に、ホリゾンタル荷重とヨーイングモーメントを発生させる荷重を示します。
表4にホリゾンタル荷重による変位量δlinear、表5にヨーイングモーメントによる変位量δrotを示します。同じ荷重なのに、ホリゾンタル荷重による変位量10[μm]に対し、ヨーイングモーメントによる変位量は1309[μm]となり、約130倍の違いがありました。原稿を書きながら、やっぱりこうなるよなと思いました。
「おい、ホントかよ」という気分になられた読者もおられると思うので、ラフな検算をしましょう。
ボールは8個なので、ボール1個当たりのホリゾンタル荷重は全体の8分の1となり、ボールのつぶれ量は式15となります。
LMブロックの変位量は、上記つぶれ量の倍なので10[μm]ですね。
今度は回転角の検算です。一番端のボールだけがあると仮定しましょう。図10から、ヨーイングモーメントを発生させる腕の長さは0.1[m]ですね。ヨーイングモーメントは式16となります。
図11に、一番端のボールだけがある場合を示します。ボールのピッチを4[mm]とすれば、L4=14[mm]=0.014[m]となり、中心回りのモーメントのつり合いは式17となります。
ボールに作用する荷重P4は式18となります。
ボールのつぶれ量は式19で表されます。
LMブロックの回転角は、上記のつぶれ量を2倍してL4で割ればよいですね。
ばね定数はモーメント÷回転角でした。
radは無次元量なので省略できますが、あえて書いておきました。
では、中心から100[mm]の位置の変位は式22となりますね。
前述した回転による変位量の倍ちょっととなりました。ボール2個しか荷重を支えていないので、こんなところでしょう。つまり、オーダーは合っていて、計算間違いはなさそうです。
ここで驚愕の事実があります。以下です。
LMガイドはモーメント荷重に対しては垂直荷重に比べて100倍以上柔らかい。
最初に面接触とボールを使った接触の剛性は2桁程度後者が小さいと書きました。それに加えて、LMガイドのモーメント荷重による剛性はあと2桁小さいということになりました。
実は、LMブロックの口開きも考慮する必要がありましたが、結論は変わらないので省略しました。LMガイドの剛性データ(ばね定数)は、メーカーに聞いていただければ簡単に教えてくれるので、前述した計算は不要です。
次回は、LMガイドのレイアウトをいろいろ変えたときの、1個使い、2個使い、4個使いの剛性について、失敗事例を交えてお話ししましょう。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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