メカトロ機器を素早く動かしたい、LMガイドの剛性を見積もる冴えない機械の救いかた(11)(3/4 ページ)

» 2026年08月25日 08時00分 公開

LMガイドの剛性を見積もってみよう

 LMガイドの剛性、つまり外力やモーメントが作用したときの変位量と回転角を見積もってみましょう。モーメントと回転角には、回転の方向としてピッチ角、ヨー角、ロール角がありますが、船を想像すると覚えやすいと思います。図7に、船をモデルにしたピッチ角、ヨー角、ロール角の定義を示します。

ピッチ角、ヨー角、ロール角の定義 図7 ピッチ角、ヨー角、ロール角の定義[クリックで拡大]

 図8にLMガイドに作用する荷重を示します。並進方向の荷重を3種類、モーメント荷重を3種類定義できます。

LMガイドに作用する荷重 図8 LMガイドに作用する荷重[クリックで拡大]

 ここでは、ホリゾンタル荷重に対するLMブロックの変位と、ヨーイングモーメントに対する回転角を見積もってみましょう。荷重÷変位、モーメント÷回転角がばね定数となります。

 「ホリゾンタル荷重÷ホリゾンタル変位」として、ホリゾンタル荷重に対する剛性(ばね定数)を求めましょう。もう1つのばね定数として、「ヨーイングモーメント÷ヨー角」を求めます。図9に解析モデルを示します。

LMガイドの剛性見積モデル 図9 LMガイドの剛性見積モデル[クリックで拡大]

 最初のばね定数「ホリゾンタル荷重÷ホリゾンタル変位」の計算におけるホリゾンタル変位は、球のつぶれ量の倍ですね。次式で表しましょう。

式6 式6

 式3を変形します。

式3(再掲) 式3(再掲)
式7 式7[クリックで拡大]

 ボールのつぶれ量と荷重の関係が分かりました。つぶれたボールは8個なので、LMブロックに作用する力はその8倍です。ばね定数は「荷重÷変形量」でした。ホリゾンタル荷重に対するばね定数kは式8となります。

式8 式8

 弾性変形挙動は非線形なので、式8右辺に変位δがあります。後で比較するときには、変位δの数値の選定に注意が必要なようです。

 もう1つのばね定数「ヨーイングモーメント÷ヨー角」を求めましょう。図9のLMブロックの全長をL[m]、ボールのピッチをb[m]とすると、LMブロック中心からボールまでの位置(L1、L2、L3、L4)とLは、次式で定義できます。

式9 式9
式10 式10

 今、LMブロックのヨーイング回転角をΔθとします。Δθの回転によって生じる、ボールのつぶれによるLMブロックとLMレールの接近量Δrは、式11となります。

式11 式11

 ボールのつぶれ量δの2倍が接近量Δrになるのは自明ですね。式12で書いておきましょう。

式12 式12

 ヨーイング荷重に対するばね定数を求める手順を以下に記します。

(1)ヨーイング角Δθを与える
(2)各ボールのLMブロック中心からの距離Liを計算しておく:式9
(3)各ボールのつぶれ量δi(i=1、2、3、4)を幾何寸法から計算する:式11式12
(4)つぶれ量δiから、ボールをつぶすのに要する力Piを求める:式7
(5)ヨーイング角Δθを与えて求まった力Piから式13でLMブロックに作用したモーメントMを求める

式13 式13

(6)ばね定数「ヨーイングモーメント÷ヨー角」は式14で求まる

式14 式14

 では、ボール径を3[mm]として数値を代入しましょう。表1にボール寸法とボールの機械的性質を、表2にホリゾンタル荷重によるばね定数を示します。ホリゾンタル荷重によるばね定数は5.329×107[N/m]となりました。

 表3にヨーイングモーメントによるばね定数を示します。ヨーイングモーメントによるばね定数は4072[Nm/rad]です。

 先ほど、ばね定数は非線形でδに依存すると書きました。表2表3の水色着色部に示すように、ばね定数を計算するときのボールのつぶれ量が5[μm]で等しくなるようにして、それぞれのばね定数を求めています。

 ホリゾンタル荷重によるばね定数は、ヨーイングモーメントによるばね定数の1万3000倍と、数値が4桁異なることを覚えておいてください。

ボール寸法とボールの機械的性質 表1 ボール寸法とボールの機械的性質[クリックで拡大]
ホリゾンタル荷重によるばね定数 表2 ホリゾンタル荷重によるばね定数[クリックで拡大]
ヨーイングモーメントによるばね定数 表3 ヨーイングモーメントによるばね定数[クリックで拡大]

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