ピッキング支援ソリューションの開発に当たり、一番重要となるのが「位置合わせの問題」だという。風間氏は「今回紹介した事例では、実際の棚にフィックスする形でピンなどのコンテンツを表示しなければならない。仮に、ピンの位置が実際に部品がある場所から数十cm離れてしまうと、作業者は正しい部品をピッキングできない。そのため、ピンの位置ズレ補正が大変であった」と振り返る。
この課題に対して、NTTコノキューデバイスは位置ズレを解決するための機能を開発しており、これをMiRZAのアップデートとして新たに提供した。これにより、ピンの位置ズレを最終的には10cm以下に抑えることに成功したという。
木村氏は「われわれはQuarkのような開発パートナーからの声を取り入れて、市場にリリースしている製品をソフトウェアでいかに改善できるのかという視点で、MiRZAのソフトウェアアップデートを何回も重ねてきた。Quarkから相談を受けた位置ズレの件についても、われわれの技術者が開発支援を行い、結果として問題を解決できた」と述べる。
NTTコノキューデバイスは、ソフトウェア開発企業向けの事業として「MiRZAソリューションパートナー」制度を導入し、情報提供や技術開発連携/支援に取り組んでいる。同制度には現在、約50社が加盟している。「例えば、アプリの開発支援の際に、開発向けのドキュメントを提供したり、課題が発生した場合にどうやって解決まで持っていくのか、もしくはデバイス側でこのような解決方法があるといった情報共有を行い、顧客やパートナーの方々と一緒となって新たなソリューション開発に取り組んでいる」(木村氏)。
また、Quarkは操作性の設計部分として、UI/UXにも力を入れて開発を進めている。PoCの段階では、MiRZAに搭載されているカメラを活用したハンドトラッキングによって、空間上に表示されているARのタッチパネルをクリックしてチェックを完了する方式を採用していたという。しかし、XRに不慣れな現場の作業員はうまく操作できず、時間がかかってしまったため、現場の声を基にUIを改良した。
風間氏は「PoC終了後の現場実装の段階でも細かいアップデートを実施した。空間上に表示されているピンの位置について、正面から見ているのか、それとも背面から見ているのかが分かりにくかったため、ピンの背面側にいる場合は正面方向を示す矢印を表示させている。また、ブロック状の棚のどこを見るべきかを分かりやすくするために、テキストでの情報を併記して表示するといった工夫を施した」と強調する。
今後の事業展開について、NTTコノキューデバイスはMiRZAの製造や販売で培ってきたハードウェアの知見を生かし、顧客のニーズに合わせたオリジナルデバイスの開発やSI(システムインテグレーション)による事業展開を広げて、XR技術を活用した業務改善支援を推進する。
木村氏は「MiRZAは今後も展開を続けるが、現行の性能をオーバースペックに感じる顧客やもっとコストを抑えて導入したいという顧客に向けて、協力メーカーとも連携しニーズに合わせたさまざまなデバイス提供を実現する」と語る。
一方、Quarkはデバイスの進化とAIの進化を融合させ、ユーザーの視点情報や作業行動ログを蓄積/分析する技術の開発を進めているという。これにより、ベテランの作業員が持つ「暗黙知」を見える化して次の世代に引き継ぐ“技術継承”の実現を目指す。そして、最終的にはコンテンツを表示するといった用途から、ユーザーが実際に見ている景色に応じたインタラクティブなコンテンツを提供するといった技術開発に注力する方針だ。
風間氏は「最近はフィジカルAIという単語が注目され始め、どちらかというとロボットやヒューマノイドといったハードウェア側に関心が集まっている。だが、個人的にはソフトウェア側が何よりも大事であり、暗黙知を基に作業を制御できる感覚を得ることが必要だと思っている。現在は、フィジカルAIが実現する世界を目指してナレッジ構築に努めており、さまざまな企業と協業しながら取り組みを進めている」と展望を述べた。
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