矢野経済研究所は、国内のXR(VR/AR/MR)市場に関する調査結果を踏まえ、XRデバイス市場および法人向けXRコンテンツ市場の分析結果の一部を公表した。
矢野経済研究所は2025年8月4日、国内のXR(VR/AR/MR)市場に関する調査結果を踏まえ、XRデバイス市場および法人向けXRコンテンツ市場の分析結果の一部を公表した。調査結果の詳細は、同社発行の「2025年版 XR(VR/AR/MR)市場動向調査(2030年展望)」で確認できる。
2024年における国内のXRデバイス(ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)およびARスマートグラス)の市場規模は、メーカー出荷台数ベースで45万6000台と推計される。HMDは2024年に新規市場導入された製品が少なかったこともあり、一般向け製品の一部で需要が頭打ちとなった。法人向け需要も一巡し、HMD全体として前年から減少した。一方、ARスマートグラスは物流分野でのピッキングや遠隔支援を中心に法人需要が後押しし、緩やかな伸びを示した。
同じく、2024年の国内の法人向けXRコンテンツ(受託制作およびサービス)市場規模は、法人向け(B2B)受託製造事業者売上高ベースで264億6500万円と推計される。業務効率の向上を目的とする安全教育、研修/トレーニング、技術継承、防災教育などのXRコンテンツ需要が増加しており、特にエンターテインメント産業や製造業向けの受託制作需要が伸びている。法人向けXRコンテンツサービスは、レンタルおよびサブスクリプションの需要が拡大傾向にある。
HMDは、特にMR(複合現実)に対応するデバイスが法人向け市場で支持された。中でも産業分野での活用を中心に、引き続きMR表示対応が必須となる見通しである。ARスマートグラスも2026年以降、MR表示に対応したデバイスが複数製品化される見込みで、今後XRデバイス市場はAR/MRスマートグラスへの需要移行が進むとみられている。
2030年の予測では、国内XRデバイス市場は87万台(HMD:52万台、ARスマートグラス:35万台)、法人向けXRコンテンツ市場は444億2200万円となる見通しである。
XRデバイスは、装着性や重量、バッテリー持続時間などが課題として挙げられるが、MR対応の進展により、特に産業分野でのXRコンテンツ活用がより一層広がる可能性がある。XRコンテンツ自体も、業務効率の向上や労働環境の維持に資する産業的インフラとして定着していくと予想される。
また、大手企業だけでなく中小企業へのXRコンテンツ普及に向けて、レンタル/サブスクリプションなど安価なサービス提供の拡充や、業界団体、行政/地方自治体による補助金制度などの支援が求められる。併せて、安全教育ではコンテンツ教材の一層の充実が必要だという。
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