さて、既にQuickLogicでアンチヒューズはやり尽くしたというか、2000年代に入って新たにアンチヒューズの新製品というのは考えにくいわけで、Silicon Blueに合流した3氏が開発を目指すのは当然FPGAということになる。幸いだったのはFreeman特許/Carter特許の有効期限が2006年に切れたことで、SRAMベースのLUTでFPGAを構築しても、Xilinxから特許侵害で訴えられる恐れがなくなったことだ。
といっても、Silicon BlueがターゲットとしたのはXilinxやAlteraのような高性能/大容量/大消費電力のFPGAではなく、携帯機器に搭載できるような小容量/省サイズ/低消費電力のFPGAだった。ここで生きたのがKilopass TechnologyのNVMである。これは通常のCMOSプロセスと互換性があり、外付けでフラッシュなどを搭載する必要がないし、XilinxのSpartanのようにFPGAのダイの上にNANDフラッシュを積層する(Spartan 3/3-Aの派生型にこういう構造の製品が存在する。ちなみにこれを手掛けたのもBirkner氏である)必要もない。
結果として、低価格でチップだけでなくシステムとしても省フットプリントを実現できた。これに加え、リークが多いSRAMブロックの代わりにレジスタファイルを使ったり、パワーゲーティングを利用してマルチプレクサなどを小まめに省電力化したりといった工夫を凝らした。製造はTSMCで65nm LPプロセスを採用している。構造はそれほど凝ったものではない(図4)が、とにかく省電力性と省スペース性に優れており、当初から4×5mmのCC72や3×4mmのCS63といったパッケージを用意していた。
図4 2009年のHot Chips 21で紹介されたiCE65シリーズの概要。1つのPLBには8つのロジックセルが含まれ、1つのロジックセルは4入力LUTとD-FlipFlopから構成される。かなりシンプルであるが、グルーロジックにはむしろ凝った構造よりこの方が使いやすいかもしれない[クリックで拡大] 出所:Silicon Blue最初の製品であるiCE65シリーズは、ロジックセル数で1792〜1万6896(FPGA System Gateで100K〜800K相当らしいが、定義がよく分からない)、スリープ時電流が3μ〜50μA、32MHzでの稼働時消費電流は3m〜24mAと非常に低く、しかも量産時価格は1.50米ドルからとなっていた。XilinxやAlteraがASIC代替を狙いつつもなかなかそれが実現できずに、まずは周辺回路となるグルーロジックから採用が始まったのに対し、iCE65は当初からグルーロジックに適した構成として開発され、まさにグルーロジックで大量に使われることになった。
これに続く製品としては、同じくTSMCの45nmを利用したiCE45シリーズを予定していたが、予想に反してTSMCの45nmの出来栄えがあまり芳しくなく、これを改良した40nmでやっと当初の予定に沿ったプロセスが提供できるようになった。このことを受けて、Silicon Blueも40nm LPを利用したiCE40の開発を進め、2011年に製品アナウンスを行う。しかしながら同年12月、Silicon Blueは丸ごとLatticeに買収されてしまった。なお、iCE40シリーズは、現在もLatticeの省サイズ向けFPGAとして提供が続いている。
ということでやっと話がLatticeに戻ってきた。前回の最後で、更迭されたCyrus Tsui氏に代わりCFOを務めていたStephen Skaggs氏が2008年までCEOを務めた話をしたが、2008年6月にAIT(Advanced Interconnect Technologies)でCEOを務めていたBruno Guilmart氏を招聘する。
その2008年は、2億2300万米ドルの売上高に対して3200万米ドルの損失を計上した。同社は2009年7月まで10四半期連続で赤字を計上した後、2009年第4四半期にやっと黒字に回復している。累積赤字を一掃するにはまだまだ遠い状況ではあるものの、一応この黒字化でめどが立ったからだろうか、Guilmart氏は2010年8月に退任。後任にはZilog CEOとして同社をIXYSに売却したDarin Billerbeck氏が着任する(図5)。
Silicon Blueの買収は、Billerbeck氏の戦略である製品多角化に向けた施策の一つであり、実際にiCE40シリーズはこの後のLatticeを支える重要な製品となった。ただし、Billerbeck氏がこの後に打った多角化のためのさまざまな施策はあまりうまく機能せず、同社は引き続き苦しい状況が続くことになる。(次回に続く)
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