FPGAに代表されるプログラマブルロジックICの歴史をたどる本連載。第7回は、Altera/Xilinxに次ぐFPGAベンダーとして知られるActelについて紹介する。Antifuseという独創的なロジック記憶手法により、PALやPLD/CPLDと比べてゲート密度を高めることに成功したものの、半導体製造委託では苦心することになる。
Altera/Xilinxの次はActelである。ActelはXilinxのちょっと後、1985年にシリコンバレーのマウンテンビューで創業した。創業者は博士のEsmat Hamdy氏と同じく博士のAmr Mohsen、そして大学教授のAbbas El Gamal氏の3人である。
Hamdy氏はエジプトのカイロ大で修士号を取得後、カナダのウォータールー大学で博士号を取得し、Intelに勤めた。まずはDRAM部門に配属されたが、IntelのDRAM事業の撤退に伴いオレゴンのFabに転属になった。Hamdy氏のチームはここで80386に利用する1μmプロセスの改良を行い、設計を変更せずに歩留まりを許容レベルまで引き上げることに貢献した。
この当時のHamdy氏の上司がMohsen氏である。Mohsen氏は自身で半導体企業を立ち上げたいと考えており、Hamdy氏に加えてスタンフォード大学の教授でLSI Logicでの勤務経験もあるGamal氏を誘って3人でActelを起業する(そのちょっと後には、やはりIntelで勤務していた博士のKhaled El-Ayat氏も参加した)。ターゲットとなるマーケットはAlteraやXilinx同様、ゲートアレイの代替である。繰り返しになるがプログラマブル型のゲートアレイの課題はNRE(非反復エンジニアリング)コストの高さと製造期間の長さである。このマーケットにMMIのPALやAlteraのPLD/CPLDが投入された訳だが、PALやPLD/CPLDのロジックゲート数は、ゲートアレイ設計者にはやや物足りないことが多かった。そこで、より大規模なPLD的なものを提供しよう、というのがActelのターゲットとなる。
そんなActelであるが、ロジックをどう記憶するかに関して、Antifuseを利用することを当初から計画していた。Antifuseは要するにFuseの逆の動作であり、初期状態だと絶縁(Off)状態だが、プログラミングを行うことで導通(On)になるという動作を行う。当初Actelは、2つの配線層の間に跨るMetal-to-MetalのAntifuseを開発して利用する予定だった。ところがこれは平たんな金属層が必要となる。CMP(Chemical Mechanical Polish)技術が普及した1990年以降であればこれは難しくなかったが、Actel創業当時はCMPを利用できるFabはIBMくらいにしかなかった。そこで暫定的な対策として、Antifuseをポリシリコン層と拡散層の間に配することにした。同社はこれをPLICE(Programmable Low-Impedance Circuit Element)と称した。ポリシリコン層と拡散層の間に、10nmの酸化膜-窒化膜-酸化膜の薄膜構造を形成。プログラミングパルスを加えると、この薄膜が導電性の高い状態に切り替わる、という仕組みであった。
ただこのPLICE、初期の段階ではOn抵抗が10k〜20kΩと抵抗値が高すぎて実用にならなかった。さまざまな苦闘の末、ポリシリコン層にヒ素を多量にドープすることで、On抵抗を500Ωまで削減することに成功。さらにプログラミングパルスの電流を増やすことで、最終的に200ΩまでOn抵抗を削減することができた。余談だがこの解決策が見つかるまでの3カ月間、Hamdy氏は毎日2回会議を開いて解決策を検討しており、この間に体重が20ポンド(約9Kg)減ったそうだ。その後、CMPが利用可能になった時点でActelは全面的にMetal-to-Metal Antifuseに以降している。
そもそもなぜActelはAntifuseにそこまで拘ったのか? という話であるが、1980年台後半で言えば確かにメリットはいろいろあった。まず不揮発性であることだ。OTP(One-Time Programming)方式なので、一度プログラミングをした後はその内容が変わることはない。これがXilinxのようなSRAM方式の場合、電源スパイクやブラウンアウトなどの電源に起因する問題以外に、放射線などの影響によるSEU(Single Event Upset)などの影響で内容が変化することはあり得る。いずれも対策方法はあるが、特にSEUだと回路側で工夫する必要があり、これには余分な回路が必要になり、それだけ提供できるゲート数が減ることになる。
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